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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第六話
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険者を気にも留めず、リリを人気の少ない場所まで連れてくると、袋に入った現金を取り出し始めました。

「これが宿泊代、これが食費、これが小道具の……」

 ぶつぶつ呟きながら数千ヴァリスの貨幣を袋から出すと、それを自分の財布にしまいこみ、まだまだ潤沢な貨幣が詰まっている袋を私の前に置きました。

「こ、これは……?」
「リリの報酬です」

 さすがにこの発言には耳を疑いました。目の前に置かれている袋には、今回の利益の七割は残っています。これを全部、ただの荷物持ち(サポーター)の報酬だと言うのです。

「……どういうことですか」

 私はこの報酬を素直に受け取ることが出来ませんでした。冒険者に対して良心などとっくに捨てたと思っていたリリでしたが、先ほどから続く胸の痛みはその良心であると自覚しました。
 リリの返しに、レイナ様は優しく微笑むと言いました。

「お金に困ってるんですよね? なら受け取って下さい」
「で、でも……っ!」
「ならば、これは私からリリに下す罰です。この袋の重みが、リリが犯した罪です。これを受け取らないなら、リリは自分の過ちから目を逸らしたとみなします」

 これが、罰……。どっしりとお金を蓄えている袋に入っているのは、リリが本来怪物祭当日にスリを行って得ようとしていた資金。それが、リリの罪。

「……解りました」

 そしてリリは、その袋に手を掛けました。



 レイナ様はもう二度としないようにと言い残し、あっさり帰ってしまいました。帰り際にリリはレイナ様の実力的に駆け出しではないと思い、思い切って訊ねてみました。
 ですがレイナ様がかざしたライセンスにははっきりとLv.1であると刻まれていて、紛れもない駆け出し冒険者であることを証明していました。

 リリは、冒険者が大嫌いです。それは変わりません。ですが、たくさんいる冒険者の中にも、レイナ様のような人がいるということを知りました。
 でも、冒険者なんて皆同じだと、リリの過去の記憶たちが囁きかけてきます。皆より弱いリリに酷い事をすると、最後にはきっと見捨てられるんだと囁きかけてきます。

 ちぐはぐな心境に苛まれる中、リリは怪物祭当日は自分の部屋に閉じこもりました。

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