第六話
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あ、私の財布、返してもらえますか?」
なっ!? スリがばれてた!? まずい、逃げなくては!!
少女のその言葉を聞いた瞬間、リリルカは背を向けて猛然とダッシュをした。いや、したはずだった。
ぐっと体が後ろに引っ張られたと思ったときには、くるりと体を翻らせられていて、少女と対面する形になっていた。
何をされたのか解らず、思わず体が硬直したところを、少女はリリルカの両肩に両手を置くことで拘束した。
もうダメだ。完璧に捕まってしまった。自分もステイタスがあるとはいえ、他の駆け出しと大差ない。体格さで既に遅れを取っている時点で、もう自分に抗う術は残されていない。
悟ったリリは大人しく震える手で懐から少女の財布を取り出し、渡した。
「……何をすれば許してくれますか」
スリは犯罪だ。それを現行犯で捕まえられてしまえば言い逃れは出来ない。このままではギルドに身柄を拘束されてしまう。そのためにはこの少女から許しを得なければならない。みっともなく乞うことになろうが、リリルカは許してもらえなくてはならなかった。その対価がどんなことでも。
何を要求されるのか解らない恐怖により震える声でそう訊ねると、少女はきょとんとした後、徐々に困ったような顔に変わっていく。
その沈黙の時間が死刑宣告を下すまでの溜めのように思え、知らず知らず握り拳を作るリリルカに、少女は答えた。
「それじゃあキミ、冒険者か何かかやってませんか?」
何だかチグハグな口調ですね……と場違いな感想を脳裏に過ぎらせたリリルカは、偽り無く答えた。
「……サポーターなら、やってます」
少女は答えに驚いたように目を大きくさせ、唇をすぼめた。
どうせ毎度のようにこの人にも雑に扱われるんだ。慣れたことだし、これで見逃してもらえるのなら御の字。
そう思ったリリルカと打って変わって少女はにぱっと笑って早速答えた。
「じゃ、今からダンジョンに行こ……行きましょう! 一日私に付き合ってもらえれば結構です」
随分安い対価ですね、と、何でさっきからわざわざ言い直しているのでしょう、と同時に思いながらリリルカは小さな肩を落とした。
本番当日が思いやられます。
メインストリートを出てまっすぐバベルへ向かう少女の背に付いて行きながら、リリルカは力なくため息を付いた。
◆
そしてリリは今、自分の観察眼の無さを痛感しています。
レイナ・シュワルツと名乗った例の少女に連行される形でバベルに赴いて、早速ダンジョンに潜りました。
バベルで装備を揃えるのも全部支給品、ポーションなど小道具は数本だけ腰に差しています。
やっぱり駆け出しだった、そう思いながらもサポーターとしてせいぜい働こうと思った、その時
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