第六話
[4/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れ、オラリオを放浪した際にたまたま通り掛かった女神に身を救われたことらしい。
リリルカに言わせれば、確かにあなたは無窮の努力の果てに得た名声は素晴らしいものだ、しかしそれは偶然助けられたから出来たことでしょう、もしあなたは助けられず見捨てられていたら、果たしてあなたは同じことを言えますか? だ。
悪事を働かざるを得ないリリルカとて、努力をしているのだ。サポーターとして養うべき知識を身に付け、何度冒険者たちに蔑ろにされても諦めずに続けた。
でも、その結果が現状だ。何も救われていないじゃないか。それでもあなたは努力が足りないと言うのか。サポーターという役目に課せられた苦痛を覆すほどの努力をしろというのか。ふざけるな。何年サポーターというサポーターが冒険者に認められようと奮起していると思っているのだ。偶然の産物で得たチャンスを棚に上げて、そんなことを言うんじゃない。
だから、リリルカはクレア・パールスが嫌いだった。
そこまで思考が回ったころ、リリルカは粗方の逃走経路を脳に叩き込んだ。先ほどの思考に加え、こんな下らないことに脳を使う自分に嫌気が差す。
しかし、仕方の無いことだ。自分が生きていくには、こうする他ないのだ。
自分に言い訳を言い聞かせ気を紛らわせ、陰鬱とした路地裏から一歩踏み出た。陽の差さない静かな路地裏と違い、メインストリートは陽を存分に浴び軒を連ねる店が活発に行きかう人たちに呼びかけている。
─リリも、少し運が良ければ堂々とこの道を歩けたのかな─
センチメンタルな感傷が頭に過ぎったとき、リリルカの視界にふと一人の姿が映りこんだ。
腰まで届く流麗な黒髪が印象的で、すらりと伸びる四肢に薄いチュニックとホットパンツを着け、一目で可愛いと思い知らされる整った顔を道具屋に並ぶ商品に向けて、しきりに物色している、ヒューマンの少女。
憎悪しているからこそ冒険者をよく知っているリリルカは一発で見抜いた。彼女は駆け出しだと。
普通の冒険者ならばバベルに並んでいる道具屋で装備を整える。わざわざバベルから降りて町に調達するよりも多少値が張っても良いからその場で整えようとする。それにあの少女が覗いている道具屋は値が安いため、金銭に余裕のない駆け出したちがよく通う店だ。
そこでリリルカに邪推が過ぎった。今は日が昇っていることもあり人の行き来は盛んだ。それに数多の種族が行きかうちょっとした人ごみも出来ている。
ならば、今は怪物祭でしくじらないように練習する絶好の機会ではないか。スリは少なからず経験しているとはいえ、失敗しないということはありえない。本番前に一度しておけば安心できるというもの。
リリルカは迷うことなく歩をその少女の元に進めた。小人族のため歩幅が小さいが、少し歩調を上げれば一般
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ