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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第五話
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、前レベルで培ったステイタスをある程度換算してから隠しパラメータに適応されるのは周知のことだが、そこにさらに底上げが施される。例えば力が500の状態でランクアップすれば250を隠しパラメータの適応させて、前レベルの500分の力を0として表記してスタートさせる。だから999でランクアップすれば、500でランクアップした人より断然強いステイタスを得ることになり、その分下のレベルの人と差が付く。
 つまりところ、Lv.5のベートはLv.1の駆け出しの少女と雲泥の差がある。だからベートが何気なく振るった拳でも目の前の少女にとっては必殺の鉄槌に等しい威力を持つことになる。

 ゆえに、掴んでいた手を振りほどかれることはありえないし、ましてや本気で殴った拳の速度に反応して避けるのは輪を掛けて不可能だ。

「……ベートさん」

 短く自分の名前を呼ばれたベートは、狼らしからぬ、むしろ臆病な猫のように肩を竦ませ、ゆっくり体勢を戻して視線を向けた。
 いつも自分に向ける無表情だが、そこに僅かな非難の色が混ざっていた。

「あー悪かったよ俺が悪かった」

 全く釈然としないままベートは声を荒げてアイズの動きかけた口を先制し、下の階層で待つ仲間たちの下へ向かった。背中に刺さる視線をひしひし感じながらもベートは、さっきの少女の顔を脳に焼き付けた。

 アイズはベートがいじけて去る背中を見つめ、いつもの彼らしいと言えば彼らしいか、と小さきため息を付き、ベートに対する好感度を少し下方修正しつつ今度は少女が歩き去っていった通路を凝視した。

 アイズも見た。さっきの少女がベートの拳を避けたのを、この目で見た。
 ベートと同じLv.5であるアイズですら、今しがた少女がした所作を理解できなかった。
 確かに動いていた。しかし、どう考えてもその動作だけでベートの手を振りほどけるはずがなかった。

「……」

 風化しかけていた遠い記憶にある幼心の自分と重なった少年と、不思議な雰囲気を纏った少女。
 心の中に芽生えた感情の正体に気づくことなく、アイズの遠征は幕を閉じた。



 うおお……危なかった……。ついさっき頬を掠め通った摩擦熱が今でも残ってる……。
 私は助けてくれた金髪の女の子に礼を言って去ろうとしたら、彼女の仲間らしい狼人(ウェアウルフ)の男に絡まれて殴られかけた……。自分でも何を言ってるのかよく解らないけど、ひとまずそんな一着を切り抜けた私は未だにひり付く右頬を摩りながら階層を繋ぐ階段を上っていた。

 にしてもさっきの人、相当レベル高いんじゃなかろうか……。効力が薄いとはいえ【自然治癒】が働いてるのに未だに頬がひり付くと思ったらコレ、火傷してんじゃん。拳風だけで摩擦熱引き起こすとか、どんだけ力と俊敏の数値高いのよ……
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