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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第五話
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く最もな姿勢だと考えているベートにとって、目の前の少女は洗礼を受けるべき対象だったのだ。

 圧倒的強者であるベートのステイタスは冒険者の中でもトップクラスだ。彼の腕には、その細い見た目とは裏腹に大岩ほどなら一発で軽々と粉砕できる力が秘められている。
 歩き出そうとしたところを後ろから襟を掴まれ、がくんと急ブレーキした少女から「ぐえ」と喉が絞まった声が漏れたが、ベートの知る由ではない。

「さっきから黙って聞いてりゃ、ずいぶん嘗めた態度しやがって」

 アイズの手前だから、殴りかかる一歩手前で踏み止まっている。彼女さえいなければ遠慮なく袋叩きにしているところだ。

 ─アイズに感謝するんだな、雑魚が─

 心の中でそう吐き捨てたベートの耳に、ありえない返答が突き刺さった。

「え? ごめん、どういうこと?」

 その時ベートは頭の血管が千切れる音を聞いた。

 ─ああ、コイツ、どうしようもねぇゴミだな─

 憧憬の人の手前だからという最後のブレーキを忘れたベートは、少女の返答を捉えたと同時に襟を掴むもう片方の手を振り下ろした。それはもはや脊髄反射の域の行為であり、実際に拳を振るうまで彼自身自覚していなかった。

 だから、それを言い訳にしたかった。

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「よく解らないけど、それじゃ」

 ベートの手から逃れた少女はそれだけ言うと再び翻り、緊張を感じさせない自然の歩調で少年が逃げ去っていった方向に歩き去っていった。
 空気を掴み、拳を空中で彷徨わせた姿勢で固まってるベートは目線で少女を追いかけていたが、しかし少女が角に姿を消すまで動くことすら出来なかった。

「……ぁ?」

 刹那に起きた現象が信じられなかった。ベートは少女を殴ることに後ろ髪を引かれるどころか躊躇すら感じていなかった。そもそも人としても見てなかったから当然だ。
 だから、余計に自分の拳が空振ったことに説明が付かなかった。

 まるで、水を掴んだようだった。
 確かに掌に少女の体重が伝わっており、指先もしっかり襟に噛み付いていた。しかし、本当に水を掴んでいたかのようにそれらの感覚が掌から滑らかに抜け落ちたのだ。そして、極々僅かに少女が傾けたことによってベートの拳が紙一重でかわされたのだ。

 まぐれではない。しかし、格下の少女に意図的に避けられたというのもありえない。レベルが1違うだけで格別な力の差が生まれるからだ。ランクアップのとき
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