第五話
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したのならば、人並みより上の自分も彼女と同等の努力を積めば更に越すことだって可能なのだと。
かつて実在していた伝説の冒険者と同じ、それか更に上回る力を手に入れるため。
ゆえに、今日も彼女は剣を執る。
そんなアイズは、思わぬアクシデントに直面して困惑していた。
【ロキ・ファミリア】が某クエストを請け負ったため、彼女は仲間たちとともにダンジョンに潜り、目的の物資を回収した。
イレギュラーの乱入によりてこずったものの探索系ファミリアの最高峰と謳われるファミリアだけあって切り抜け、達成感とともにホームに帰投している最中だった。
下級冒険者が見れば卒倒してしまうほどの頭数のミノタウロスと遭遇したのだ。まだそこまでは問題なかった。上級冒険者たる彼らからしてみれば中層出身のモンスターに後れを取ることは断じてありえない。
なのであっさり半数を屠ったときに、それが起きた。
なんと残りのミノタウロス全頭が一斉に背を向けて、集団逃走を図ったのだ。
確かに圧倒的な戦力さを目の当たりにしたモンスターがその冒険者に下り飼われる(テイム)ことはありえるが、ついぞ敵前逃亡を図るのは聞いたことは無い。それも全頭が一斉に。
重ねて最悪なことにミノタウロスたちは次々と上部階層に昇っていったのだ。
その先に待ち構えているのは、実力に心もとない下級冒険者たち。そして、可能なだけの一方的な惨殺祭り。
モンスターを取り逃しただけでも恥の極みなのに、そのせいで犠牲者でも出してみればギルドや他派閥から糾弾の声が上がるのは間違いなく、何よりそれ以前の問題として寝覚めが悪い。
よって早急なる駆除のため慌しく全員総出で追いかけ、一頭また一頭と潰していったのだが、最も早く逃げ出したミノタウロス二頭が遂に五階層─本人たちは知らないが、片方は一階層まで逃げていた─へ到達してしまい、危うく危機一髪のところで犠牲者を出さずに済んだのだ。
で、だ。ルームの四隅の角に追い詰められていた駆け出し冒険者は、アイズの手によって救い出されたものの、ミノタウロスの返り血によって上半身全て物理的に真っ赤に染まった少年と、アイズの到着をいち早く察したらしく壁に張り付いて返り血のシャワーを回避した美少女からの視線が、アイズにとって少し痛いものだった。
自分の失態で駆け出しの彼らに怖い目に遭わせてしまったので、彼女なりの誠意と謝辞を込めて声を掛けたのだが、全く反応が返ってこないのだ。
血まみれの少年は身じろぎ一つせず言葉を失ったように静かに見上げ、難を逃れた少女はアイズと少年に視線を往復させている。
途轍もない申し訳なさに襲われるアイズは、座り込む少年に手を差し伸べて重ねて言った。
「立てますか?」
ファミリアの者
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