暁 〜小説投稿サイト〜
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第五話
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 アイズ・ヴァレンシュタイン。またの名を【剣姫】
 これらの名を聞いて知らないという人は、オラリオ全土を探しても0に等しい。
 今では探索系ファミリアの中で頂点に君臨する【ロキ・ファミリア】のエースにして、女神にも勝るとも劣らない美貌、その容姿から想像も出来ないほど恐ろしい剣の冴え。八歳という異例な年から冒険者になり、僅か一年足らずでLv.2に到達しえた天才。

 誰もが認める、女性最強の冒険者。それがアイズという少女の正体だ。誰もが彼女の容姿や腕を羨むなか、アイズは一つも驕れることなく腕を研鑽していき、あまりにも行き過ぎた戦闘の多寡に中には戦闘狂をもじって【戦姫】と呼ばれるまでに至る。

 しかし、アイズは全く納得していない。なぜなら、圧倒的に足りないからだ。自分が超える壁と決めている、史上最強の女性冒険者の足元にも及んでいない。
 驕れていないが、自分に才があるのは自覚している。さすがに周りからその年でその実力はおかしいと八歳のころから言われ続ければ、嫌でも悟る。
 しかし、アイズは見てしまったのだ。自分よりも遥か高みに辿りついた伝説の冒険者を。

 オラリオに腰を下ろす全ファミリアの情報を統括しているギルドが大々的に、生ける伝説クレア・パールスの冒険者としての軌跡と、この世を去る直前の彼女のステイタスを公開していた。クレアが生きている間にも似たようなことは何度かあり、本人は知られても大して問題ない─探られても手の施しようが無い─から特に気に留めずに己の情報を提示した。
 
 その中身は、冒険者ならば全員が目を疑うようなものばかり。当然のように基礎アビリティはカンストしており、前代未聞の十二個の発展アビリティの内容に加えそれら全てS、隔絶的な攻撃魔法と絶対魔防魔法パーフェクトアンチマジックと神の恵みとまで言われた最高峰の治癒魔法、極め付けにはレアスキルと思しきスキルを一つ所有しているという有様だ。

 それを見た誰かが『神様みてぇじゃねぇかよ……』と言った。それは言いえて妙だった。なぜなら神の恩恵とは即ち、神様のみ持つ神の力を何十倍にも希釈したものなのだから、それを緻密に積み上げていけばオリジナルの神に迫っているも等しい。よって、一つのレベルが上がるたびに神格化しているとも言えるのだから、上記の呻きは全く以って正しい感想だった。
 
 そして何よりの事実が、自他共に認める無能の少女が無窮の努力によって成した結果であったということ。これが、全冒険者の何かを強烈に焚きつけた。
 だから幾重に時が流れようがクレア・パールスの名が薄れることはないし、遂には彼女が死去した十年後には迷宮神聖譚ダンジョン・オラトリアに登録されたのだ。

 彼女の偉業を目にしたとき、アイズは悟った。誰もが口を揃えて凡才と呼んでいた少女がここまで成長
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