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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第四話
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ゃなくて本気でそれを言ってるのかキミは……。さっきまでの弱弱しい雰囲気はガラリと変わり、確固たる決意に満ち満ちた少年の白亜の髪が僅かに逆立っているようにさえ見える。

 くそぅ、キミみたいな人ほど支えたくなる人はいないよ!

「解った、私もキミも逃げない、なら下の階層に一緒に逃げるよ!」
「し、下!? 強いモンスターと遭遇しちゃうかもしれない!!」
「バカ言え! キミの後ろにヤバイくらい強い奴が二頭もいるんだ!! そこらのモンスターなんて怯えて通りがかりやしないよ!」
「ぎゃあああああ!!!?? 忘れてた!! 早く!! 早く逃げよう!!」

 ガシっと私の腕を掴んだ少年は己の全開を足に込め脱兎の如く駆ける。彼より劣る足の私は少し浮くように走る羽目になるが、自分ひとりよりも断然早い。
 私を掴む手に頼りがいのある意気を感じられ、こんな状況なのに自然と笑みが零れた。

 そして、その笑顔は絶望の色に変わろうとしていた。

 ヤバイ……正方形のルームの角に追い詰められた……。というか少年、あんなに率先して走ってるから場所知ってるもんだと思って走ることだけに集中してたけど、何にも考えずに走ってたんだなキミ!! いや私もどこにあるのかとかすっかり忘れてるから強く言えないけどさ!

『『フーっ、フー……ッッ!』』

 さしものミノタウロスもここまでの逃走劇に付き合わされて疲れを感じているのか、若干肩の上がり下がりが激しい。それ以上に私たち二人の方が激しいけどね。
 私の隣の少年は悪夢のミノタウロスの巨体二つを見上げ、笑みと呼ぶにはあまりにも濃い負の色を口元に滲ませていた。埃まみれの白亜の髪、涙腺決壊寸前の赤い瞳、死の鉄槌を受けるのを待つだけの哀れな兎のような姿だ。
 どしん、と一つ地鳴ればビクンと痙攣にも見た振るえが少年の体に走る。私も他人事じゃないけど、生憎前世ではこういう状況に軽く一万を超えるくらい追い詰められたことのある人として慣れっこだ。打つ手無いけど。

 でも、だからといって諦める訳にはいかない。少年を助けるために、何よりもセレーネ様と再会するために。

「諦めるな、無理だと思っているうちはまだ無理じゃない、だから諦めるな!」

 駆け出し時代からの口癖だ。あの頃のほうがもっとひどい環境で、もっと頑張っていた。駆け出しよりも断然利がある今の私が根を上げてどうする! 何かあるはずだ、きっと何か……ッ!

 極々圧縮された時間の中で、私の視界はふと捉えた。

 ミノタウロスの背後になびいた、眩しい限りに輝く金髪を。

 何か、来るッ!! 戻りつつある昔の勘が、鋭く警告した。それに素直に従った私は、ほぼ反射的に体を壁に張り付かせた。

 瞬間、二頭の猛牛の体に剣閃、瞬く。

『『ヴ、ウ……? 
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