第二話
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さない。
そんな断固たる決意を胸に、密かに運動し始めるのだった。
◆
十三歳になった。私がこの歳になるまで迷宮都市オラリオに行くことをずっと胸の奥に仕舞い込んでいた理由は、この歳こそ私の人生の始まりだからだ。
レイナの十三歳の誕生日、私は自分の思いを打ち明けた。
「お父さん、お母さん。是非お願いしたいことがあります」
「おお、どうした、そんなに改まって。欲しいものがあるなら何でも買ってやるぞ」
「あなた、そんなに見栄を張らなくてもいいのよ」
「おいおい心外だなぁ」
「真剣な話なんです」
いつも中睦まじい両親が話から脱線し始める前に、私は心の底から真剣に言葉をつむいだ。仲良く笑いあっていた二人は私の意を汲んだのか、すっと真摯な眼差しで私を見つめた。
「言ってごらんなさい」
「私が、迷宮都市オラリオに行くことを、許してください」
両親は一切揺らぐことなく私の目を見続けた。少しの沈黙を挟んで、お父さんが重々しく口を開いた。
「理由は何だい」
「ある人と会いたいからです」
「会ったら、すぐに戻ってくるのかい」
「……解りません。そのまま冒険者になるかもしれません」
そこで初めて母が口に手を当てた。オラリオの名が出たときから薄々予想はしていたのだろう。冒険者とは一般的に見れば、未知のモンスターに無謀にも向かっていく、いわば死亡率トップランクの危険極まりない職業なのだ。余程の物好きか酔狂な人しか冒険者に望むことはない。
打って変わって、お父さんは尚も表情を崩さず、ただ私を見定める。腕を組み視線を交し合うお父さん、なるほど一家を支える大黒柱の威厳がそこにはあった。
長い沈黙だった。壁にかけられている時計の秒針が、その長さを物語っている。無機質な音がリビングに響く中、ようやくお父さんは口を開いた。
「何となくだったが、レイナ、君がそのことを相談してくる事は解っていたよ」
「えっ?」
「君はしょっちゅうオラリオについての資料を読んだり、自分の背中を鏡越しに覗き込んだりしていたからね。鈍い僕でも察しはついたさ」
そ、そんなにオラリオのことを調べてたかなぁ……。それに背中も……。いつも明るく陽気なお父さんだけど、見るところはしっかり見ていたんだ。
厳しい顔を浮かべる両親を前に、私はうつむくことしか出来なかった。いきなり年端もいかない女の子が世界で最も熱い都市と言われるオラリオに行きたいと言い出したのだ。それは良い顔しないに決まっている。
ダメか……。諦念がよぎったとき、それはお父さんによって切り捨てられた。
「行って来なさい」
「……え」
「僕と母さんはそのことについて何回も話し合った。こんなにちっちゃなときから運動も出来て聡明なレイナの事だ。きっ
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