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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第一話
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、体を動かすはずの心臓は鼓動を鳴らさずに止まっていた。
 彼女の最期の言葉からたっぷり十秒後、私の涙で濡れている彼女の両手に縋りついた。

「クレアぁ! クレアぁっ! クレアぁ……!!」

 何度彼女の名前を呼んでも、彼女の元気な返事は返ってこない。代わりに痛くなるほどの静寂が包み込んだ。
 その静けさを聞きたくないばかりに、私は子供のように大声で泣き叫んだ。



 クレア・パールスの死去は冒険者の業界だけでなく、神々の間にも衝撃が走った。冒険者たちは憧憬と尊敬の念を寄せていた人物が亡くなってしまったことに、神々たちは自分たちの予想を裏切って努力のみで勝ち昇ってきた凡才に冥福を讃えた。
 市民たちからの参列者も多かった。数は少なかったがオラリオ全土を危機に陥れた元凶から守ってくれた英雄に感謝と労いの意を込めて、安らかに眠る彼女に花が副えられた。

 彼女の偉業は両手ではまるで数え切れないほど存在する。歴史上初Lv.10、全基本アビリティの正真正銘のカンスト、合計12個の発展アビリティの所有、レアスキルの所有、施設運営への一国レベルの支援、某戦争を平和的解決、ダンジョン五十階層まで単独踏破、etc.
 そしてなりより、これら全てただの凡才の努力によって成された偉業であること。

 式は生きる伝説と呼ばれた者にふさわしくないほど粛々と開かれた。彼女の主神だったセレーネの意向だった。派手な事を好まないクレアを配慮して普通の式にしてくれと頼んだのだ。クレアが有名になり始めたころから十人の生活費を賄ってもなお余裕があるほどの財力を持っていたクレアの家は至って普通で、その理由がほとんどを設備運営やギルド支援金に宛がっていたほか、本人が慎ましい生活を好んでいたからだそうだ。

 一人の冒険者の葬式に十を軽く超える神が参列するという異例の式となり、自由奔放で気ままな神たちですら厳かに臨んだ葬式となった。

『セレーネたん、すげぇ落ち込んでるな』
『そこを俺が全力で慰めて虜にしよう』
『バカだな、天界で三大処女に数えられる内のトップだぞ? 無理に決まってるだろ』
『言われてみればセレーネたんが唯一愛した人かぁ……代わって欲しかったぜ』

 式が終わればやはり気ままな神たちは、一番に参列して今もなお涙を落とすセレーネの話題に盛り上がる。
 他者のファミリアに関わりたがらないことで有名なゼウスとヘラすらも参列していたのだが、式が終わり次第早々と退場していった。残った神はヘファイストスとロキだ。

「うちはクレアたんを見誤っとったわ。才に恵まれない平凡な子でも、揺ぎ無い覚悟があれば何でも出来るんやな」
「人の無限の可能性を提示した子だったわね」

 酒に目が無いロキは四六時中飲酒しているが、この場に限って言えば飲酒は
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