暁 〜小説投稿サイト〜
裂かれた札
1部分:第一章
[2/2]

[9] 最初 [2]次話
くとも仁八にはそう思えるものだった。
「化け物に!?連れが!?」
「その通りだ。このままではな」
「それはまたおかしいことで。私は一人ですよ」
 笑ってそれを否定した。
「それでどうして連れが殺されるなどと」
「わしには見えるのだ。これはまことだ」
 しかし彼は言う。
「御主の連れがな。それでだ」
「それで?」
「金は要らん。これを持っていけ」
 こう言って仁八に何かを出して来た。それは人型の白い小さな紙であった。腹のところに何やら黒い墨で書かれているがあまりにも独特な文字なので仁八には読めなかった。
「これをな。そうすれば難を逃れられる」
「左様ですか。お金は要らないと」
「こんなものの一枚どうということはない。それに」
「それに?」
「金を払えと言えば要らぬというであろう」
 行者はそう読んでいたのだ。
「違うか?それは」
「いえ、その通りです」
 彼自身それを認める。上方はそうしたところは江戸よりせちがらいのである。
「それに関しては嘘は申しません」
「だからだ。そのまま持って行くのだ」
 こう言って渡すのだった。
「よいな。これで助かる」
「助かりますか」
「安心せよ。それではな」
「はあ」
 何が何なのかわからないままその人型の札を受け取った。そのうえでその日は宿に泊まり翌日京に帰ろうというところで一人の旅の女と道が同じになったのだった。
「今日にですか」
「はい、帰ります」
 その女の名前をお淀という。背が高く眉がすらりとしており目元が実に涼しげだ。器量よしと言ってもいい。旅姿でありそれで京まで戻るというのである。何でも江戸にいる親戚の店に手伝いに出ておりそれが終わったというのだ。

[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ