預言
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い子ですね」と告げて、カリムは「こちらこそお忙しい中、わざわざご足労ありがとうございます」と逆にお礼を言われてしもうた。
なんか恩返しの永久機関みたいやな、この状況。
「それと、サルタナ提督からこちらの書類を届ける様に言われました。どうぞ」
「はい……なるほど、身元保証人に聖王教会が台頭するための書類一式ですね。確かに受け取りました」
「サルタナさんですか……あの彼が手を貸してくれるとは、随分丸くなりましたね」
「シスター・シャッハ殿はサルタナ閣下をご存知なのですか?」
「ああ、リインフォースさん達は彼の過去を知りませんでしたね。私やカリムは彼と面識があるのですが、初めて会った頃の彼はそれはもう、半分死人同然というかまるで魂の抜け殻でした」
「これだけ聞いたら当然気になるだろうから、一応理由を教えるわ。彼はね、とある管理外世界の生まれなんだけど、実は孤児院の出身なのよ」
「え、孤児院……ですか?」
「そう、しかもその孤児院は今はもう無いの。彼の世界で起きていた戦争で、焼夷作戦を行う爆撃機から孤児院のちょうど真上に爆弾が投下されてね……。彼の育った家は跡形も無く吹き飛んでしまったの」
「その孤児院は管理世界の有氏による投資や経営で成り立っていたんですが、その人物もその爆撃で亡くなってしまって……。偶然防空壕の近くで遊んでいた事で避難が間に合い、生き残った彼はその後、焼け野原となった街を背景に全焼してしまった孤児院の土地で、共に育った家族の焼け焦げた遺体や遺骨を埋葬していました」
「家族の……埋葬……」
「それから孤児院の経営を行っていた者からの連絡が来ないという事で聖王教会に派遣依頼が舞い込み、騎士見習いだった私とシャッハは騎士達の手伝いという事で彼の世界に赴いて、その惨状をはっきりと目の当たりにした。親を失い泣き崩れる子供、子供の遺体を抱き締めて慟哭の声を上げる母親、街と家族を焼き払った者達に激しい怒りと憎悪を抱く父親、悲しみと絶望のあまりに自殺を図る老夫婦、人の身体が焼け焦げて鼻につく嫌なニオイ、何も無く渇き切った光景。そこは……文字通り地獄だったわ……」
「そして……私達は埋葬を終えて途方に暮れていた彼を見つけて、ミッドへ連れてきました。あの街や戦争の事は気がかりでしたが、当時の私達ではそちらの方は何も出来ません。しかし絶望の淵にいた彼を見捨てたくなかった、その事で私達は騎士達に頼み込んでここまで連れてきたのです」
「でも連れてきた所で、彼に刻まれた心の傷は相当根深いものだった。たった一発の爆弾で家族を失った彼は、傍から見れば人生をやり直そうと勉強や訓練に励んでいた。でも少し目を離すと、こちらが悲しくなるような目でいつも空を見上げていたわ」
「連れてきた側として何と
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