短編62「電柱」
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僕は電柱だ。コンクリート製で、実は中は空洞で、意外と揺れているのは知られてない事ではないだろうか?
目の前には屋根が見える。背の高さは二階建てを超えるからだ。僕らはみんなで、電線や電信ケーブルを支えていた。
そういえば、僕らは電信柱とも呼ばれていた。電信柱の電信とは、つまりは電話など事だ。電柱には電気を通す電線と電話ケーブルやケーブルTVなどの通信の線も支えていた。今は多くの電柱がいろんな線を支えている。
ピピピー
朝は、小鳥が僕らにとまり、朝のさえずりを聞かせてくれる。
ワンワン、にゃーにゃー
昼は、犬や猫が通りを歩いていた。
カアー、カアー
夕方は、カラスの声に……
「あっ!もう帰る時間だ」
と、子どもたちが帰っていった。
長い間、立っていると、色々な風景を見る事が出来る。ついこの間生まれた子どもが、乳母車に乗り、おぼつかない足で歩きだし、駆け出しだかと思うと……
「俺、ここまで登れる!」
と、僕を登ったりした。だから、『上まで登って感電しないでくれ〜』と祈ったものだ。
そうそう嵐の時だ。先輩の電柱が倒れた事があった。
「俺はもうダメだ。あとは頼んだぞ」
と、言って「木」で出来ていた先輩は猛烈な風に折れてしまった。電線が切れると、あたりに火花を散らしていた。最近は、僕を見下ろす家も多くなった。高層マンションに、3階建ての一軒家も増えたからだ。
そんな僕にも寿命がやって来た。昔の木の電柱なら使い道はあった。防腐剤がたっぷりと染み込んだ電柱は、ログハウスなどにもってこいなのだ!
「はあ〜」
僕はため息をついた。コンクリート製の僕に待っている結末は、最期に砕かれて終わりだからだ。きっと埋立地行きだろう。
風速60メートルに耐える僕だが、経年劣化には耐えられない。そして、とうとう僕は地面から抜き取られた。
「オーライ、オーライ。ストップ!!」
トレーラーに載せられ運ばれる僕。僕の体はバラバラにされた。僕の一部の鉄筋は、製鉄原料になった。僕の体のコンクリートは粉砕され、そして僕は……
「おーい!頑張れよ〜」
なんと僕は新しい街の、新しい道に生まれ変わった!今度は僕が……
新しい電柱を支える番になったのだった。
おしまい
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