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山本太郎左衛門の話
3部分:第三章
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てはならぬ、常々そう言われていたからだ。
「まあ一応は読んでおくか」
 彼は学問はあまり好きではなかった。そんなものは学者にでも任せておけばよいと考えていた。
 だが最早戦国の世ではなかった。とうの昔にそれは終わり今は学問の時代であった。
 とりあえずは論語を読んだ。一章を読み終えるとそれを閉じた。
「さて」
 すっかり暗くなっていた。彼は事に備えた。
 やがて行灯の火が急に強くなった。
「む」
 見れば火は次第に強くなっていく。そして火はまるで蛇の様に長くなりあともう少しで天井に着く程になった。
「あやかしか」
 そうとしか考えられなかった。平太郎は咄嗟に身構えた。腰の刀に手をかける。その時であった。
 今度は何やら匂いがしてきた。
「何じゃこの匂いは」
 まるで腐った魚の様な匂いであった。生臭く鼻につく。
「何処からじゃ」
 それは居間の方からする。彼は刀を手にしたまま居間に向かった。そこではまた妙なことが起こっていた。
 何と居間に水が流れているのだ。波をうち流れている。
「また妙なことが」
 水の源を探す。だが見つからない。
 とりあえず寝室にまでは及ばないのでその時はそのまま捨て置いて寝室に帰った。そして刀を手にし壁にもたれかかったまま休んだ。

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