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山本太郎左衛門の話
21部分:第二十一章
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日で参ってしまうと思っていた。そうすれば引き揚げるつもりであった」
 そうやら彼はそれ程強硬にやるつもりはなかったようである。
「懲らしめであるからな。ところがだ」
 彼はここで一息置いた。
「お主は参らぬどころか逆に配下の者達を遊ぶ始末だ。我もそれに乗ったが」
「そうであったか」
「お主の胆力には感服した。それで今日ここに来たのだ」
「挨拶というわけだな」
「その通り。実はまだ手があるのだが」
「それは何じゃ」
「我の知り合いに神野悪五郎という男がいる。天下無双の猛者だ」
「そんなに強いのか」
「人ではない。その強さは魔王の中でも屈指であろう」
「そうか」
 平太郎はそれを聞きながら腕が鳴るのを感じていた。だが山本はそんな彼を嗜めるように言った。
「止めておけ。人では勝てはせぬ」
「それ程なのか」
「うむ。そうそう容易にはな。勝てるとしたら悪源太でも連れて来るしかあるまい」
 言わずとしれた源氏きっての猛者である。
「こう言っては何だがお主では勝てぬ。だがもう神野は呼ばぬ」
「何故じゃ」
「お主の難は終わったからだ」
「終わったのか」
「そうだ。元々一月と定めていた」
 どうやら山本は平太郎の下に配下の者を送るのは一月の間だけと考えていたようである。
「それは終わった。もうお主には何もせぬ」
「そうか」
 本来は安堵するのだろうが彼は違っていた。少し寂しいものを感じていた。
「むしろお主の肝に感じ入った」
「肝にか」
「うむ。この一月の間よくぞ平気でいられた。これ程までの者は今まで見たことはなかった」
「そうか」
「その肝に褒美をやろう。我が来たのはその為でもある」
 そう言うと懐から何かを取り出した。それは一つの槌であった。そしてそれを平太郎に手渡した。

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