18部分:第十八章
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い持って行くことにした。
「もし」
彼はザルの上の柿を手に権八の家の門のところで声をかけた。程なくして声が返って来た。
「おう」
それは権八のものであった。声を聞く限りどうやら元気そうであった。
「やはりな」
どうやら昨日の騒ぎはあやかしの仕業であるようだ。彼はその声を聞き納得した。
「おお、平太郎殿か」
彼は血色のよい顔で出て来た。危篤だったとは全く思えない。
「一体何の用じゃ」
「うむ。実はな」
彼は持っている柿を彼に差し出した。
「昨日化け物がうちに次々と投げ込んでくれたものじゃ。どうじゃ」
「おお、これはいい」
やはり彼は柿が好きであった。満面に笑みをたたえそれを手にした。
「有り難く受け取らせてもらうぞ」
「うむ」
平太郎はそれを手渡した。権八はにこにことしている。
「美味そうじゃな」
「うむ。昨日たらふく食ったがかなりいけるぞ」
「それはいい。では早速後で頂かせてもらう」
「そうすればいい。たんとあるからな」
「うむ、礼を言うぞ」
権八は笑顔で家の中に戻って行った。そしてそのまま消えた。
「元気であったな」
それだけで彼はほっとした。
「まあ大体わかっていたことであったが」
それでも実際に目で見ると落ち着くものである。彼はそれを見届けると自分の家に引き揚げた。
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