17部分:第十七章
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第十七章
「気が効くのう。近頃何かと忙しいわ気分が落ち着かぬわで掃除もしていなかったわ」
平太郎はそれを見て目を細めた。居間が綺麗になると箒は飛び去り元の玄関に戻った。
その日はこれで終わりであった。居間が綺麗になったことで平太郎は満足した。
だが次の日はその折角の掃除が無駄になってしまった。
夕方から椀や机等家財道具が飛び交った。それを見た彼はとりあえず頭に座布団を被りそこから襖の中に隠れた。
「これは危ないのう」
そして安全な場所からそれを見守った。家財道具は飛び交うだけでこれといったことはない。別に平太郎を狙っているわけでもない。だが彼は面白くはなかった。
「昨日掃除してくれたのは何だったのじゃ」
あらためて化け物の気紛れさに腹が立った。だがすぐに思い直した。
「化け物じゃな」
結局その一言で済む話であった。
「化け物が何をしようとおかしなことはない。そう思えばわかるな」
そう思うと妙に納得できた。彼はその日は襖の中で休んだ。
「明日のことは明日考えればよい」
少し暑いがそれでもよく眠れた。目が醒めて出てみると家財道具は元の場所に戻っていた。それを見た彼はとりあえずはホッとした。
「掃除をしなくて済んだわ」
彼が心配したのはそれだけであった。だがそれがなくて一息ついたのであった。
二十四日は夕方から出て来た。まずはやけに大きな蝶が姿を現わした。
「蝶の妖怪か」
考えてみるとこれは今まであまり聞いたことがない。中々珍しいものである。
異様な大きさだ。鷲位はある。色は虹色であり実に美しい。そのまま見ていると飽きない。
「これはいいのう」
こちらに何かをしてきそうでもない。彼はその蝶をゆっくりと眺めることにした。
蝶はゆっくりと飛びながら柱の方に向かう。そしてそこにぶつかった。
すると蝶は揺れた。少し動きを止めたかと思うとそこから無数に分かれた。
「ほう」
平太郎はそれを見て声をあげた。まさかここで分かれるとは思わなかったからだ。
「どうなるかのう」
そしてその次の動きを見守る。無数の蝶は銘々に飛びはじめた。
よく見るとどの蝶も姿形が異なる。白い蝶もいれば青い蝶もいる。赤いのも黒いものいる。大きさも実に多様である。それが平太郎の周りを飛び回る。それだけでかなり美しい光景であった。
「よいぞよいぞ」
彼は上機嫌であった。そしてそれを悠然と見ることにした。
蝶の飛ぶのを見ていると時間が経つのも忘れる程であった。だがそれもやがて終わった。
明け方になったのだ。鶏の声がすると蝶達は煙の様に消え去った。
「やはりな」
この蝶達も妖怪変化の類であることはわかっていた。だが怖くはなかった。
むしろ楽しい。ましてやこの蝶達は実に美しかった。
「こ
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