17部分:第十七章
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んなものならば今宵も出て来て欲しいものじゃ」
彼はそう思ってすらいた。そしていいものを見ることができたという思いのまま眠りについた。
だがこの二十五日はそうはいかなかった。今度はかなり厄介なものが来た。
何と槍が来るのである。それは居間で自由自在に飛び回った。
「これはいかん」
さしもの平太郎も難を逃れることにした。
厩まで行った。流石にここまでは来ないような。
「ここなら一安心か」
どうやらそのようであった。彼はその日はここで休むことにした。
「ぶるる」
枯れ草の上に寝転がると馬が顔を近付けてきた。いつも乗っている馬だ。可愛がっている。
「おお」
彼はその愛馬の顔を見て安心した。
「お主が側にいてくれるか、今宵は」
馬は答えない。だがそのかわりに平太郎の顔を舐めてきた。
「ははは、よせ」
彼は笑いながらそれを手で退けた。
「お主の気持ちはわかった。では今宵は二人でゆうるりと休もうぞ」
「ひひーーーん」
馬は答える様に鳴いた。そして彼の側に寝転がった。
「うむ」
平太郎は彼の腹の上に頭を置いた。そして腕を組み休んだ。
朝の目覚めはまたいつもとは違っていた。どうも気持ちがいい。
「ふああ」
起き上がるともう朝日が差し込んでいる。雀の鳴く音も聞こえている。
「これもなかなかよいのう」
馬も目を醒ました。そして主に挨拶する様にいなないた。
「うむ、お早う」
彼は愛馬に声をかけた。そして起き上がり居間に向かった。
「どうなっておるかのう」
流石に不安であった。いつものよりも遥かに剣呑なものが飛び交っていたのであるからそれも当然であった。
用心しながら居間を覗く。朝なのでもう何も飛び交ってはいなかった。
「どうやら安心かのう」
しかしまだ油断はできない。彼は慎重に中に入った。
槍は一本もなかった。どうやら他の場所に移ったらしい。
屋敷の中を探ると元の蔵の中にあった。見れば蔵の鍵が壊れている。
「そういえばまだ修理していなかったな」
平太郎はそれを見て舌打ちした。鍵が壊れているのは実は前からわかっていた。
だが打ち捨てていたので。どうせ中には大したものもない。この蔵とは別の蔵に置いていたのだ。
ここには古い服や昨夜飛んでいた槍等しかなかった。この槍にしろ先は錆びて到底使い物になる代物ではないのである。
「夜のせいで見えなかったか」
またもや舌打ちした。どうもこれは彼の武士としての不用心を戒めることのような気がした。
そう思った彼は反省した。そしてすぐに人を呼び鍵をなおさせた。そして槍の刀身も付け替えた。
「化け物に教えられたわ」
いささか面白くなかった。だが戒めにはなった。
顔を顰めながら修繕された鍵をかける。その中には当然あ
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