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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第四話
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見苦しい所をお目にかけ、誠にお恥ずかしい限りで御座います。」
 藤一郎が連れ出されるや、静江はそう言って深々と頭を下げた。
 呆気に取られていた天河だったが、我に返って慌てて言った。
「どうぞ頭をお上げ下さい。ですが…随分とお強いですねぇ。」
「主人はあれ位しなければ言うことを聞かないのです。我が儘に育てられたせいか、自分の意にそぐわない者は端から切ってしまうのです。それでは行く先が見えてしまうと言うもの。」
「確かに…。」
 天河もグスターヴも、共に目の前の夫人に感服した。かなり教養もあると見え、現代女性の先端を行っている様に思えた。
「それで、お二方は敬一郎と梓ちゃんの許嫁の事でお越し下さったのですね?」
「お気付きでしたか。」
 天河はグスターヴと顔を見合せた。まさか率直に切り出されるとは考えておらず、そのため二人は些かたじろいでしまった。
 そんな二人に静江は軽く笑みを浮かべ、敵意の無いことを見せたため、天河は静かにその口を開いた。
「御察しの通りです。不躾とは存知ますが、私共は梓ちゃんを見るに見かねて参りました。正直に申し上げ、彼女には想い人が居りまして、あちらの家でも猛反対されているのです。口約束とは言え、どちらかが破棄しない限り彼女はただの道具として扱われてしまうでしょう。」
「やはりそうなってしまいましたか…。修君も大変ね。」
「…!?奥様は修君をご存知で?」
「ええ。実は彼、私の遠縁なんです。」
 それに二人は驚かされた。そんな話し聞いたこともなかったのだ。
 そのため、グスターヴは半眼になって静江へと問い掛けた。
「それじゃ、何で今まで何もしなかったんだ?お前がちょっとあの石頭に言えば済んだ話しじゃねぇかよ。」
「グスターヴ…言葉が汚いよ…。」
 天河はそう言ってグスターヴを窘めたが、静江は笑って「良いですよ。」と言う。そんな静江に、二人はこの夫人が男なら、この家は安泰間違いなしと思ってしまった。無論、男だったらここには居ないのであるが。
「主人はあの通りですので、一番気になるのは世間体なのです。全く…仕事以外は前世代の遺物です。」
「随分と辛辣ですね。」
 天河が苦笑しつつそう言うと、静江は何とも無げに返した。
「もう男だけに任せては置けませんので。」
 それが静江と言う人物なのだ。男尊女卑…最早その様な時代は終わったと言わんばかりの彼女は、この先もきっと時代の先端を行くに違いない。
「ですが、主人がこの家の主であることには変わりありません。私の一存で決められるのであれば、直ぐにでも許嫁を解消致しますが、主人がそれを承知せねば無効となります。それ以上に…敬一郎がそれを由とはしないでしょう。」
 静江がそう言って溜め息を洩らすと、そこへふと一人の青年が姿を見せた。
 その青年は顔立ちも
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