幕間 〜幸せを探すツバサ〜
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たわね」
「まあ、そんな感じ。例えばこの腕輪の宝石……金剛石だけど、外ではダイヤモンドって呼ぶ国があったりする」
「だ、だいあもんどっ」
「だいあもんど……」
「へぇ……だいあもんど、ねぇ」
新しい響きを心に留めて、光を反射してキラキラ光る宝石を三人はじっと見つめた。
ほっと一息。こればかりは嘘を付き続けるしかない。完全に調べられたらアウトである。今はこれでいいのだと言い聞かせながら、自分のクズ具合に嫌気が差し落ち込む。
「長いこと商売やってきたが初めて聞く名だぞ?」
「国によっていろんな呼び方があるからな。産出地は南の方が多いけど、こういった光モノを買う奴は何処の国でも大抵金持ちだ。美しいモノとか高価なモノってのは力を示すためにも魅力を示すためにも需要があるだろ? 見たとこ宝石商じゃなくて銀細工の商人みたいだし、店主の弟さんのこの造りならきっと大陸の外でも売れると思う」
「へへ、いいこと聞いたぜ。この大陸で目ぼしい客が消えたら外も行って見るかなぁ……」
「あ、それはオススメしない」
「あん? なんでだ?」
ぴしゃりと言い切る彼に、不機嫌そうに店主はジト目で見た。
「護衛とか今まで通りじゃ無理だから。言葉も通じない、右も左も分からない、そんな場所で宝石とか銀細工を売るなんて……鴨が葱しょって、おまけに鍋まで担いで来るようなもんだ」
「……わけが分からねぇ」
「賊だけじゃなくていろんな人間から狙われるって事だよ。個別に専属契約先を見つけて卸売り……あー、繋がれる商人仲間を見つけて手伝って貰うならまだマシだけど、それでさえ横領……持ち逃げされたら終わりだ。契約書も誓約書も口約束も異国人ってだけで不履行がまかり通ったりするし、まず真っ先に法が違うから裁くのにも捕まえるのにも問題だらけだ。信用なんざ大陸内だから大きな力を持つわけで、太い金づるを捕まえときたい商人だけじゃねぇのは分かってるだろ? そん時は泣き寝入りするしかねぇな。
後はな、こんな感じに商品持って行って選んでもらうってのは特に止めとくべきかな。今までも気に入ったもん買って貰う為に全部の商品持ってったんだろ? 商品だけじゃなくて命まで奪われるのがオチだよ。大陸の外で発展してるとこ行くまでにどれだけ荒れてる土地があると思ってやがる。だいたい分かったが、袁家に売り込むのもお前さんの命の保証も交渉対価に入ってたんだろうに。その交渉の舌は評価できるが、慢心すれば死ぬぞ」
「う……すげぇな、あんた」
すらすらと口が良く廻る。知識から思考をフル回転させて注意を並べただけだが、店主にとっては耳に痛い言葉だったらしい。
漸く大陸は安定してきた所で、店主は袁家という太い客の庇護下にあったから生き永らえていたのではなかろうか、と彼は当たりをつけていた。実際
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