幕間 〜幸せを探すツバサ〜
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、黒麒麟さんよ。ま、商売に恨み事を持ちこんだら痛い目を見るのは自分だ。儲けて楽しめりゃそれでいい。悪いもん勧めることもしねぇしぼったくることもねぇから、見て行ってくんなせぇ」
彼も謝ることは絶対にしない。商人も感情的になったりしない。商売とは利と信用が何よりである。個人の感情は有効利用できることもあるが、多くの商談に於いては邪魔な異物になることがほとんどである。
何処まで行っても利を優先するのが商売魂。例え太客の皆殺しを命じた男であろうと、人との付き合いがモノをいうこの時代で、その商人は利を得る為の方法を間違えなかった。
感情をぶつけるくらいなら新しい金づるになって貰おう、悪く言えばこう。良く言えば……新たな商売筋の開拓の分岐点であろう。
少し怯えつつ、自分達が敷いた理不尽に罪悪感を覚えつつであった三人も、害意は無いと理解して商品に目を通して行った。
じっくりと一つを丁寧に観察しつつ、彼はほうとため息を吐いた。
「いい仕事してるねぇ……あんたが作ったのか?」
「いんや、それじゃ効率が悪い。弟が作って俺が売る。売れなきゃ俺が悪いって感じよ。生憎俺には言葉を乗せる舌と人を見る目しか取り柄が無くてね」
「クク、それは誇っていい武器だよ。職人も大変だけど、営業マンってのも大変なんだから」
懐かしい、というように彼は目を細めて笑った。過去を思い出して、よれたスーツを着て駆けまわっていた自分を懐かしく思い返していた。
聞きなれない単語に、店主は首を傾げた。
「営業まん? なんだそれ?」
「あー、営業マンってのは異国の言葉であんたみたいな人のこと言うんだ。商品を誰かに売り込む人。昔は俺も駆けずり廻ってたんだが……モノを一個売るってしんどいんだよなぁ」
「え……あんたって商人だったの!?」
過去を聞いたことのない三人は、それぞれに驚愕から目を見開いた。
「……旅を続けるには金が必要だろ? 一番手っ取り早いのはモノを売ることなんだ。香辛料とかは凄く役に立ったぞ」
内心でしまったと思いつつ、どうにか平静を装って誤魔化した。
知識として、調味料や香辛料は手に入りにくい国ではバカ高いと彼は知っている。この大陸に於いても胡椒は高いのだ。その代わり、その土地独自の香辛料を安く買って他の場所で売れば、それだけ儲けが出るのは当然。保存が効くモノで一番理由付け出来るモノであった。
智者である詠と雛里は特に騙される。月も、おいしい味付けをしっかりと為されている料理は金持ちしか食べられないと知っているから彼の言葉を信じた。
「なるほど……嵩張らないで腐らない、持ち運びし易くて欲しい人が必ずいる。大量発注じゃなくて個別に売り込めば、例え他より安く売っても利益分で代わりの品と旅用の資金が満たされる……考え
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