中編
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まれかけた。
「よほど飢えていたんだと思う。でも汚れた精霊は精霊の国へ帰れなくなって、この世で苦しみ、狂い、地獄へ堕ちる」
顔を上げ、少女は月を見た。今夜は満月で、黄金色に輝いている。あのナルガクルガも同じ月を見ていることだろう。だが汚れた迅竜の心が、この優しい月光で癒されることはない。
「だから人間の手で、精霊の国へ送り返すの。兄さんが失敗したから、私がその役目を引き継ぐ。チュプの狩人は昔からそうやってきたわ」
彼女の瞳には一点の曇りもなかった。澄んだ黒い瞳には憎しみは宿っていない。ただ強い意志があるのみ。
ルーヴェンはその瞳を直視できなかった。自分はきっと、こんな奇麗な目をしていないのだろうと。
「ルーヴェン」
俯く彼の顔を覗き込み、ピリカレラは語りかける。
「気をつけて。汚れた精霊は人間にも取り憑くわ」
「そう……かもな……」
そう答えるのが精一杯だった。ひたすら魚を刻むことに没頭しながらも、ルーヴェンの胸にはピリカレラの言葉が深く食い込んでいた。
自分の狩人への道は憎悪の道、復仇の道。教官たちに諭されても、今までそれを変えられなかった。
だが、このピリカレラという少女を見ていると、彼はそんな自分が無性に情けなく思えてきたのだ……
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