第四十話 祈り
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ついにアベルの継承式が始まる。
私は、アベルの従姉であるドリスの横に座った。
「ついに始まるね、継承式」
「うん。そうだね」
ドリスは何気なく返事したつもりなのだろうが、その言葉はどこか硬い響きがあった。
「……もしかして緊張している?」
「当たり前でしょ」
「へぇ〜。意外」
「何で?」
「だって、ドリス王族なんだからこういう式なんて慣れてると思ったのに」
私の言葉を聞いた時、ドリスはわかってないなぁという顔をした。
「そもそも継承式自体出席するの初めてなんだから」
「えっ!?」
つい大声を出してしまい、周りの人からの目線が集中した。すみませんと頭を下げ、私はドリスに尋ねる。
「本当にこれが初めて?オジロンさんの継承式とかは?」
「オヤジは代理。単にパパス叔父様の席にいるだけ。継承も代理として。それに」
「それに?」
「私達は分家。余程の事態が起こらない限りは王がいなくても本家直系の人間が見つかるまでは代理。血筋が絶えていたら、分家側が継承するけどそんな事態まず起こり得ないし。だからめちゃくちゃ特例を除いてはあたしたちに継承権はないの」
本家と分家。
その言葉を聞いた時にそこはかとなく不安に感じたてしまったのが顔にでたらしい。
「もしかしてミレイ、あんた王位をめぐる骨肉の争いとか想像したんじゃないでしょうね」
「……バレてしまいましたか」
するとドリスは笑顔で私の肩を叩きながらいった。
「大丈夫だって。この国ではそんなこと無いから。変な小説の読みすぎじゃない?」
あながち間違ってないため違うと言い切れないのがちょっとアレだった。(どれだよ)
「!来たよ」
ドリスが指した方向を見ると立派な王族衣装に身を包んだアベルとビアンカがいた。そんなに長い間顔を合わせなかったわけじゃないのに二人の顔が別人に見えたのは二人とも瞳にに確かな覚悟と、決意が籠っていたからだろう。二人の身に纏う雰囲気がいつもと完全に変わっていた。
「先代の王、パパス・エル・ケル・グランバニアに代わりてオジロニア・エル・ケル・グランバニアが王位を継承する。しかし」
一旦オジロンさんは口をつぐんだ。
どうしたことかと見てみるとその瞳に涙が浮かんでいた。
「先ずは我が兄、パパスに祈りを。兄はこの国を愛し、民を愛し、友を愛し、家族を愛した。兄は魔物の卑劣な策にかかり命を落としたがその魂は最後まで潔白だった。
グランバニア史上最も偉大な王であった我が兄に魂の安らぎがあらんことを。黙祷」
しばらくの間、会場の沈黙の中にすすり泣きが満ちた。
誰もがパパスさんの死を悼み、祈っているのがわかった。私も祈った。パパスさんに。私の仲間の父親に。
「黙祷やめ」
その一言で会場内の沈黙が少し軽くなったがすすり泣く声は消えなか
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