2部分:第二章
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かったのか」
「カリフが街で商人に化けて何かとしているとか色々あったぞ」
「カリフがねえ」
ハールーン=アル=ラシードだ。いつも伊達男の宰相と首切り役人の黒人を従えている。生真面目だが結構物騒なカリフというのが印象だ。何しろすぐに死刑を宣告するのだ。
「そう、そのカリフの話や異国の話。実によかった」
「そしてそれからも」
「ベッドの中は言うまでもない」
「ほう」
「堪能させてもらった。やはり寝るのなら女の横だよ」
「そうだな。若ければ」
「何か若さをもらった気分だよ、全く」
「そうなのか?」
だがスレイマーンはそれには違和感を覚えた。
「あまりそうは見えないが」
「どうしたんだい、一体」
「いや、今の君の姿だけれどな」
「ああ」
「徹夜だったのかい?」
「まあそうだけれど」
「それでか。随分やつれている」
「だが全然疲れていないんだ」
マムーのテンションはかなり高かった。いつも精力的な彼だが今日は特にそうだった。
「何か無性に力が出て仕方ない」
「そうなのかい?」
「そうさ。何を言っているんだ」
「いや、それならいいが」
それでもどうにも引っ掛かるものを感じずにはいられなかった。それだけ今のマムーのやつれは異様であった。まるで三日も眠っていないかの様に。
「今夜もあの娘にするよ」
「今夜もかい?」
「ああ、何しろ最高だからな。何もかもが」
「そうかい。じゃあ今日も稼ごう」
「ああ、今日はどんどん稼ぐぞ」
イスラム商人らしい言葉であった。イスラムは商人の宗教であり商業を奨励していた。だからこそ瞬く間に普及したのである。武力で広まっただけではないのだ。
「それで今夜も」
「無理はしないようにな」
「何、大丈夫だよ」
くままである目で答えた。
「夜の為ならな」
「そうか?」
「そうさ、じゃあやろうぜ」
「ああ」
スレイマーンも自分の店に入った。それから商いに励んだがマムーの様子は明らかにおかしかった。ずっと高いテンションのままものを売っていた。かなり稼いでいるがそれを何に使うかはわかっていた。夕刻になり商売が終わった頃になって彼はマムーに声をかけた。
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