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【D×D】誤解だ。良い人掃除男と呼ばれる事もある
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事儀礼は、人間界に降りて以来ずっと続けてきた。我ながら未練だ。
箸を使うのも久しぶりだったが、バラキエルは最初に目についた肉じゃがに箸をつけた。香り、舌触り、味。そのどれもが過去を想起させる。

「お味、どう?」
「……美味い。懐かしいな……朱璃の料理の味だ」
「……よかった」

その時、ほんの小さくだが朱乃が微笑んだ。かつて娘として朱乃がバラキエルに見せた笑みだった。
――こんなにも罪深い自分に、この娘は笑いかけると言うのか。耐えられず、問う。

「私のことを……恨んでいるか?朱乃」
「恨んでいます」

淀みない返答が分かってはいた筈の心を抉る。
だが、その言葉は次に続いていた。

「でも、憎んではいません」
「それは……」
「少し前の事です。私は同級生の一人に自分の秘密を打ち明けました……でも、全ての話を聞いた彼はふと真剣なまなざしをして、私にこう問いました」

――お前は親父を殺したいほど嫌いなのか?母親の仇だと思って憎しみを募らせてるのか?

父親を殺す覚悟。その時になって朱乃は、自分がそんなことを一度も考えたことがなかったという事実を思い知らされ、愕然とした。

「答えに窮しました。彼はそんな私を見て、『お前の父への恨みは本気じゃない』と断言されました。……たった今、私自身も確信できた。私は、お父様を殺したいほど憎めなかった……でなければ、どうして褒められて微笑みが出たりするものでしょうか」
「朱乃………」
「お母様がお父様の所為で死んでしまったという事実は私の中でも今更覆せません。でも……それでも」

朱乃はつう、と静かな涙を零した。

「お父様は、いつでも私のお父様です。許せない事はあるけど、憎む事なんて出来ない……!」
「………ッ!!」

その後の事は、涙と嗚咽を抑え込むので精一杯だったからあまり覚えていない。
覚えている事と言えば、出された食事を完食したことと、娘を父として抱擁することが出来たことくらいだ。



そして、朱乃に本心を気付かせた青年が目の前にいる。
お世辞にも行儀がいいとは言えない、普通の人間だ。それでも確かに、その知的好奇心と悪戯心に満ち満ちた瞳は不思議な魅力があった。


※ここから微妙にかみ合わない会話をお楽しみください。


「掃詰箒くん、だったね」
「あー……ひょっとして娘さんの事ですか、ねぇ?」
「ああ。聞いた話では随分(娘が)迷惑をかけたそうじゃないか?」
「あー……っと、どんなふうに聞いてるかはちょっと窺い知れないけど、(俺のかけた迷惑は多分)そうたいしたものじゃないすっすよ」
「ほう……」

気まずそうに顔を顰める箒。……この時箒は「朱乃の奴め俺の悪口をしこたま親父に吹聴したんじゃないのか?あいつ根っからの
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