六話:ルドガーと骸殻
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していき、彼を愕然とさせる。そのまま槍は止まることなく容赦なく地を引き裂きながら進み続け、進行方向にある全ての木々を猛獣のように呑み込み、食らい尽して蹂躙していった。
「嘘だろ……デバイスも何もなしに僕のブレイズキャノンを一瞬で破るなんて……」
自らの最強の技を事もなげに破られて衝撃を受けるクロノをよそに、つまらないとばかりに蹂躙をやめた槍は大地と森に大きな爪痕を残してブーメランのように持ち主、ヴィクトルの元に帰って来る。ただの一撃で引き起こした凄惨な光景に茫然として言葉が出ないルドガー以外の一同を尻目にヴィクトルは骸殻を解き、今度こそ帰るために背を向ける。
「帰るぞ、アルフ、フェイト」
「あ…ああ。そうだね」
「は、はい」
どこか、ボーっとしたようなアルフとフェイトに呼びかけてヴィクトルは歩き出す。堂々と自身が殿を務めて去って行くその背中をクロノも、なのはも、ユーノも、止めることが出来なかった。想像してしまったのだ。あれをまともに食らわされ、ひき肉にされる自分の姿を。ようやく姿が見えなくなり地面に降り立ったなのははヘタリと座り込んでしまう。
耐え切れないほどのプレッシャーがかかっていたのだ。ルドガーがそんななのはの元に駆けより支える。ルドガーは何も、ヴィクトルを恐れて逃げたわけではない。ヴィクトルとあのまま戦いを続ければ間違いなくなのはとユーノ、それにクロノが巻き添いを食らうと判断したので戦わなかったのである。彼も骸殻を使えばあれと同等、もしくはそれ以上の力は容易に引き出せるのだ。それ故に本気でぶつかり合う事は出来なかった。
「ヴィクトル……今のお前は何を望んでいるんだ?」
気を取り直したクロノから話を聞かせて貰いたいとなのはとユーノが頼まれるのを見ながらルドガーはかつて生まれ変わりを望んだもう一人の自分にポツリと零すがその言葉は深い闇の中に溶けて消えていくだけだった。
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