一節・少女と男
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あないのよ」
「!!」
彼の言うとおりだ、少女はそう思った。
確かに自分の全てをつぎ込んで、その果てに力尽きるのならば、少女にとっては満足なのかもしれない。
けれども先に進みたくて冒険に出て、人の命を救いたくて冒険に出て、此処から脱出する希望を諦めずに冒険に出て、結果モンスターに葬られてしまった人は、それを見たら何というだろうか?
見たら、等といっても所詮それは想像の世界。だが、迷宮にこもれる力を持ってして、それを自己満足での死の為に使うなど、侮辱しているに他ならない。
しかし、ならばどうしろと言うのか、少女には考えつかなかった。理屈では愚かしいと分かっては居ても、クリアー不可能なゲームで自己を貫き通すのに、他の方法が考え付かない。
と、男はそんな彼女の考えを見越していたか、必要もないのにパイプを二度叩いてから、顔を向けてきた。
「お前さんがネガティブ思考に走っちまったのが分からんでも無いが、クリアー出来ねーとか、燃え尽きる場所はここだとか、一ケ月でそう決めるのはちょいと早いやね」
「早いも何も……現状が告げてるじゃない。このゲームは何をしようともクリアー不可能―――」
「ところがドッコイそうでもない、道はまだ残ってるんだわな。お前さんばっかり中心に世界が回ってる訳で無し、事はちゃんと進んでんのよ」
それだけ言うと男は腰のポーチに手を突っ込み、何を探しているのか物色し始める。
「え〜と? おっ、あったあった……ほれ」
「?」
見つけて取り出したお目当てのアイテムを、男は少女に向けて放り投げてきた。投げ上げられたのは羊皮紙アイテムらしく、弧を描いてちゃんと此方に向かってくる事もあり、少女は地面に落ちるのを待たず、両手で落とさぬようキャッチする。
スポッ、と掌に収まったそれの紐を解いて中身を確認してみれば、
『第一層攻略会議を開催する為、ハイレベルプレイヤーを募る! 開催日時は明後日! 時刻は夕刻! 場所はトールバーナ噴水広場!』
と、データ上の誌面の面積一杯に、太い字でデカデカ書かれていた。
疑うまでも無く、明らかに “第一層を攻略する” といううまが書かれた―――即ち攻略できるかもしれないと言う可能性が張りだされた内容に、少女は驚きの余り顔を上げて、刺青半裸の男と羊皮紙の間で顔を行ったり来たりさせている。
「道はまだまだ繋がってる。二か月かかっちまったがよ、それでも希望は一本だけでも確実に繋がってんだわな」
「……」
「可能性があるんなら、尽くせる事を有りっ丈行うんだったよな? なら今がその時じゃないのよ」
そこで男は一旦言葉を区切るとパイプを深く咥え、ニヤリとした笑いを消して、何処か
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