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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十五 木ノ葉五人衆
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その必要はねぇぜ」
突如、聞き覚えの無い声がネジの警告を一蹴する。





瞬間、ナル達は一斉に地を蹴った。距離を取る。
声がした方向に視線を遣れば、四人の音忍がナル達を呆れたように眺めていた。

「なんだァ?上忍でも追って来たのかと思ったが…ただの下忍かよ」
「ザコキャラぜよ。つまんねぇな」

右眼を前髪で隠した少年が肩を竦め、六本の手を持つ少年があからさまにガッカリした風情で唇を尖らせた。 
独特の髪型をした恰幅の良い少年が無言で戦闘態勢に入る隣で、端整な顔立ちの少年が先ほどナル達が議論していた内容について答える。

「安心しろ。此処にいるのは四人だけだ」
「そんな言葉、信じられっか!……っていうか、やっぱりお前かよ…」
わざわざ自ら、正確な人数を口にした少年にキバが噛みつく。その一方で見覚えのある顔に、キバは己の嗅覚の正しさを改めて思い知った。
薄々感じてはいたのだ。一度嗅いだ事のある匂い故に。


思い浮かぶのは、中忍第二試験にて一度味わった恐怖。
『砂瀑の我愛羅』が殺戮した現場に偶然居合わせてしまった際、結果的にキバ達八班を救った存在。


「君麻呂、だったか。こんな処で何して…」
「愚問だな」
ネジの質疑に、彼――君麻呂は涼しい顔で答えを返す。
その一言で、木ノ葉の面々の脳裏に以前の苦い思い出が甦った。

『木ノ葉崩し』。
大蛇丸が仕組み、砂隠れの里をも巻き込んだ一件である。
三代目火影のおかげで、木ノ葉壊滅という彼の目論見は食い止められたが、その被害は甚大なものだった。
その首謀者たる大蛇丸が創設したのが、音隠れの里。
ならば、音忍は全て大蛇丸の配下と言ってもいい。


「大蛇丸の手の者か…」
「今サスケと一緒にいる奴も中忍試験に参加してた音忍の匂いがすんぜ」
くん、と鼻を鳴らしたキバが暗に多由也の事を指す。
その言葉に、恰幅の良い少年――次郎坊が片眉を微かに吊り上げた。
「鼻が利く連中だ……【土遁結界―――」


いきなり、ダンッと大地を叩く。瞬間、叩いた場所から亀裂が奔った。
その亀裂はナル達が佇む地面にまで迫り来る。


「―――土牢堂無】!!」
刹那、ナル達はドーム状の土壁に閉じ込められた。










円形の土壁が光を遮る。
暗闇の中、キバがチッと舌打ちした。

「くそ…ッ」
「見たところ、ただの土の壁じゃない」
取り囲む壁をいのが触る。「あのデカイ奴の結界だ。おそらく、何か仕掛けがしてあんだろーぜ」とシカマルが注意した。

「こんな壁、ぶち破るしかねーだろっ!」
さっさとこの状況を打破しようと意気込むキバに、ネジも同意する。
「迂闊に動くのは危険だが…このまま黙っていても意味は無い」

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