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第三章

「絶対にね」
「本当だよね」
「本当よ」
 さらにしつこく感じたので言葉にまでそれが宿る。
「神様と仏様に誓ってね」
「言ったよね、今ちゃんと」
 そしてまた問うてくる牧男だった。
「僕の言うこと何でも聞くって」
「だから言ったわよ」
 いい加減江美も腹が立ってきていた。
「それともまた言おうかしら。何度でも耳元で言ってあげるわよ」
「あっ、もうわかったから」
 牧男もこう言われるとやっと静かになった。
「聞いてくれるんならそれでいいよ」
「わかってくれたらいいわ。それじゃあね」
「うん、それじゃあ今夜ね」
「そうよ。確かめるわよ」
 こうしてその日の夜二人でそれぞれ算盤と剣道の帰りに待ち合わせることになった。江美が算盤塾の授業を終えて外に出るとだった。剣道着を着て竹刀が入った袋を持っている牧男がその塾の入り口に一人で立っているのだった。剣道着は上も下も紺と黒という暗めの色なので夜の中では見えにくかった。
「あれっ、待っていてくれたの?」
「それ言わなかったっけ」
「聞いてないわよ」
 こう返す江美だった。かなり驚いた顔で。
「今はじめて聞いたけれど」
「あれっ、そうだったっけ」
「そうだったっけじゃないわよ」
 しかし江美の言葉は続くのだった。
「確か私が剣道場に行くって話だったじゃない」
「けれどそれだったら江美ちゃんが待たないといけないじゃない」
 しかし牧男も牧男でこう言い返す。
「女の子待たせるのってよくないよ」
「そんなの気にしないわよ」
 江美は何を言ってるのよ、と顔にはっきり出してそのうえでまた言った。
「それに隣同士だし」
「剣道が終わる方が先だからいいじゃない」
 しかしそれでも牧男は言うのだった。
「そうでしょ?先着順でね」
「先着順って」
 言葉の使い方が違うと言いたかったがどうにも言いそびれてしまった。
「それは」
「まあまあ。とにかく」
 話は牧男のペースになっていた。
「行こうよ」
「行こうよって?」
「だから。すねこすりを探しにだよ」
 彼が言うのはこのことだった。
「約束じゃない。確かめに行くって」
「それはそうだけれど」
 元々その為に待ち合わせている。だからこれは言うまでもないことではあった。
「けれど」
「まさか気が変わったとか?」
 そしてまた牧男が言うのだった。
「そういうのじゃないよね」
「違うわよ」
 ここでもまたムキになってしまう江美であった。
「それはないから」
「じゃあいいじゃない」
 それを聞いて何故か笑顔になる牧男だった。
「それだったら。じゃあいいよね」
「ええ」
 成り行きのように頷く江美であった。
「わかったわ。それじゃあね」
「それじゃあ夜道を歩いていくけれ
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