2部分:第二章
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第二章
「本当に妖怪かしら」
「あっ、まだ疑ってるんだね」
「絶対に違うと思うわ」
女の子もムキになっていた。あくまでこう言って引かない。
「お化けなんていないわよ、絶対に」
「じゃあ確かめてみる?」
男の子もまたムキになっていた。
「ここは。それでいい?」
「ええ、いいわよ」
女の子も引けない。受けて立った。
「それじゃあ。何時見に行くの?」
「今晩だよ」
男の子は最早思い立ったが吉日だった。
「今晩でいいよね」
「今晩って」
だが女の子はここで男の子の提案に戸惑った顔を見せるのだった。
「いきなりなの?」
「そうだよ。江美ちゃん今日算盤塾だよね」
「ええ」
「それで僕剣道」
二人共習い事をしているのである。小学生の常と言っていい。
「その帰りに丁度いいじゃない。道だって同じだしね」
「それじゃあ今日なの?」
「そうだよ。若しかして嫌なの?」
「そ、そんな訳ないじゃない」
戸惑いを必死に隠しながら言い返した言葉である。
「それよりも牧男君こそよ」
「僕が?」
「そうよ。剣道よね、今日」
「うん、そうだよ」
はっきりと江美に答えた。
「そうだけれど」
「じゃあ丁度都合がいいわね」
江美もまた言うのだった。
「それじゃあよ。今夜よ」
「その妖怪を確かめるんだよね」
「そういうことよ」
もうそれで決めてしまった江美であった。
「いいわね、それで」
「望むところだよ。ただ」
「ただ。何よ」
「若しも猫じゃなかったらどうするの?」
楽しそうに笑って江美に問うのだった。
「猫じゃなくてすねこすりだったら。どうするの?」
「どうするのって」
そう言われると困った顔になる江美であった。
「そう言われても」
「僕はあれだよ」
牧男は楽しそうに笑ったまま江美に話し続ける。
「江美ちゃんの言うこと何でも聞いてあげるよ」
「何でも?」
「そうよ、何でもね」
こう彼女に言うのだった。
「聞くよ。若し猫だったらね」
「そうなの」
「そうだよ。それじゃあ江美ちゃんはどうするの?」
そしてまた江美に問うのだった。
「若し猫じゃなかったら。どうするの?」
「そうね。じゃあその時は」
とりあえず少し考えてそのうえで。答えたのだった。
「同じことしてあげるわ」
「同じことって?」
「だからよ。牧男君の言うこと何でも聞いてあげるわ」
こう牧男に返すのだった。
「何でもね」
「その言葉嘘じゃないよね」
牧男はここで江美にまた問うてきた。
「その言葉。嘘じゃないよね」
「私は嘘は言わないわよ」
江美は牧男の言葉をしつこく感じたので少しむっとした顔になって返した。
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