五話:審判と運命
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懐かしい夢を見ていたものだと思いながらヴィクトルはソファーから起き上がると何やら重たい物が体に乗っていたので不思議に思い見てみると自分のお腹を枕にしたフェイトがすやすやと眠っていた。そして、その体にはアルフがかけてくれたのであろう毛布がかかっている。その事に心が暖かくなりながら彼はフェイトの頭を優しく撫でる。すると、もぞもぞと動いたかと思うと目をさましてトロンとした目でヴィクトルを見つめてきた。
「目をさましてしまったか……すまないな」
「……お父しゃん」
「ッ! 」
ヴィクトルさんに対して『お父さん』と言ったかと思うと、フェイトは、また直ぐに目をつぶって眠ってしまった。ヴィクトルはその言葉にしばらく呆然とした表情でフェイトを見つめていたが、やがて、悲しそうにポツリと呟く。
「私には……父を名乗る資格などない」
娘の愛情を利用し、尚且つ娘の心に深い傷をつけた男には。
「あわわ! ご、ごめんなさい。ヴィクトルさんが眠っているのを見ていたら私も眠くなって……お、重たかったですよね」
しばらくして目をさましたフェイトが自分の状況を把握して顔を真っ赤にしながら謝り始める。ヴィクトルは余りに必死な様子に苦笑し、アルフはそんな微笑ましい様子をホームビデオに納めていく。自分がビデオに撮られていることに気づいたフェイトはさらに混乱しあわあわとして混乱し始める。流石にフェイトが可哀想に思えてきたのでヴィクトルは助け舟を出すことにする。
「気にすることは無い。特に寝苦しいこともなかったからな」
「で、でも……」
「私に甘えたいのなら好きなだけ甘えればいい。君の父親にはなれないが、大人として子供を甘やかすことぐらいは出来る」
「……お母さんの為にがんばらないと」
懸命に母の事を思うあまりに自分の事を蔑ろにするフェイトにヴィクトルは心を痛める。そして、今更ながらに理解する。自分が娘の愛情を利用して、その頑張りを無に帰そうとしたことを……。娘は自分を救うという願いを叶えるのだと懸命に涙をこらえながらカナンの地を目指した。
そして、彼の思惑通りにエルはかつての自分がそうしたようにアイボーである“ルドガー”と共に帰って来た。彼は当初の計画通りに正史世界の自分をその仲間諸共殺そうとした。何故殺さなければいけなかったのかと言うと、正史世界には同じ物が同時に存在することは出来ずに、偽物の方が消えてしまうからだ。
ヴィクトルの願いはカナンの地にて生まれ変わりを願う事だったが故にまずは本物の自分を消さなければならなかったのだ。だが、ヴィクトルの願いは娘の拒絶と自分とは違い“エル”を見捨てなかったルドガーにより打ち砕かれた。
だからこ
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