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第一章
足元
近頃村の中で色々と言われていた。
それが何かというと些細な話ではある。夜道を歩いていると何かがまとわりついてくるように感じられるのだ。
「何かな、あれって」
「そうよね。何かしら」
皆それが何かわからず首を傾げるばかりだった。
「夜道歩いているとな」
「足元にまとわりついてくるのよね」
「それが鬱陶しくて」
皆口々に困惑した顔で言うのだった。
「もう何なのかな、本当に」
「気を取られて仕方ないのよ」
「それってさ。ひょっとして」
これは村の小学校でも話題になっていた。子供達も歩いているとその足元に何からまとわりついてくることを感じ取っていたのだ。皆それが鬱陶しくて仕方がないのだ。この日も教室の中でその話をしている。誰もがその足元にまとわりつくものが気になっているのだ。
「妖怪かな」
「妖怪!?」
「そう、それじゃないの?」
皆でこんなことも話すのだった。
「お化けじゃないかな、本当に」
「お化けっていうけれど」
「まさか」
「いやさ、言われてるんだけれど」
ここで一人の男の子が言うのだった。丸坊主でやたらと目の大きな男の子である。
「夜に歩いていると足元にまとわりついてくる妖怪がいるんだって」
「そんなのがいるんだ」
「うん、すねこすりって言ってね」
「そういう妖怪がいるらしいよ」
「じゃあそれ?」
「それなの?」
皆それを聞いてそれなのかと思いだした。
「その妖怪が夜道にまとわりついてくるの?」
「だからなのかな」
「そうじゃないの?」
丸坊主の男の子はそれを聞いて考える顔で述べた。
「その妖怪がさ。悪戯して」
「そんなの嘘に決まってるじゃない」
おかっぱの女の子が男の子の言葉に笑って言ってきた。
「お化けなんかいないわよ」
「じゃあ何だっていうのさ」
「猫か何かに決まってるじゃない」
女の子は笑ってこう言い返した。
「そんなの。そうでしょ?」
「猫?」
「そう、猫」
女の子はそれだと言う。
「それに決まってるじゃない」
「いや、違うよ」
しかし男の子はそれを否定するのだった。
「絶対に猫なんかじゃないの」
「いいえ、猫よ」
しかし女の子は胸を張って告げた。
「だってさ。猫って足元にまとわりつくじゃない」
「それは知ってるよ」
男の子もそれは知らないわけではない。猫については。
「僕だって猫飼ってるしね」
「だったらそれに決まってるじゃない」
女の子は男の子が猫のことは認めてきたのを見てここぞとばかりに仕掛ける。
「そうでしょ?だったらそれよ」
「いや、それは違うね」
しかし男の子はまだ言うのだった。彼も引くつもりはない。
「それはね。
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