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人になった虎か、虎になった人か
人になった虎か、虎になった人か
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手はかなり年老いていましたよ」
「ならばより危険だ」
 知事はさらに言葉尻を強くさせた。
「何故でしょうか」
「年老いた虎だな」
「ええ」
 樵はそれに頷いた。
「そうなるとかなり危険だ。年老いた虎は仙術を使う」
「仙術を」
「そうだ、仙術だ」
 知事は再び答えた。
「もっともあの男は人が虎になったものだがな」
「そのようですね」
「それならば相当の力があるだろう。仙術がな」
「人から虎になるものだけで相当な力が必要ですね」
「そうだ。そうしたことも考えるとな」
 彼は答えた。
「下手に飛び込んではまずい。慎重にいくぞ」
「わかりました」
 彼等は頷いた。
「ではどうしますか」
「そうだな。奴は今家の中にいる。まずは取り囲むぞ」
「はい」
 言われた通り取り囲んだ。
「次にどうしますか?」
「薪を持って来い。多量にな」
 知事はまたそう命令した。彼等は言われた通り薪を持って来た。
「持って来ました」
「それに火を点けろ」
 次にそう命令した。
「火炙りにする。そしてそれで退治するぞ」
「成程」
 彼等はそれを聞いて頷いた。
「それで責める。よいな」
「わかりました」
 言われるままに火を点けた。そしてそれで家を覆った。忽ち四方八方から煙が巻き起こる。
「さあ来い」
 知事は腰の剣を手にしていた。他の者達も得物を手にしている。樵も斧を手に握っていた。
 彼等は息を飲んでいた。間も無く起こるであろうことに全神経を集中させていた。
「どうでる?」
 この程度で虎が死ぬとは思えなかった。彼等は待っていたのだ。
 やがて煙の一部が揺れ動いた。そして中から出て来た。
「出たぞ!」
 それを見た者が叫ぶ。そして左右からその前に殺到する。そして虎を待ち構えた。
「来い!」
 虎が出た。あの年老いた細長い虎であった。彼は炎に包まれて前に飛び出して来た。
「グオオオオオオーーーーーーーッ!」
 地の底から響き渡る様な咆哮を轟かす。そして目の前にいる者達に襲い掛かろうとする。
 だが皆剣や槍を手にしていた。そしてそれでもって虎を防ぐ。
 虎は炎の中に押し返されようとする。だがそれでも咆哮を止めず、彼等にかかろうとする。
「一人ではいるな!」
 知事が剣を手に命令を下す。そして虎のところに来た。
「槍では駄目だ」
 彼はそう言った。
「弓を持って参れ」
「ハッ」
 一人が頷いてそこを去る。そしてすぐに弓矢を持って来た。
 知事はそれを手にすると放つ。それで虎を射た。
 矢は虎の喉を貫いた。鏃が虎の首の後ろにまで出る。
「やったか!」
 皆それを見
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