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人になった虎か、虎になった人か
人になった虎か、虎になった人か
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 その上に一匹の虎が乗る。そしてもう一匹。そして段々になって樵に迫ってきた。
「何と」
 樵はそれを見て仰天した。逃げようにももう木の頂上にまで来ている。飛び降りてもどのみちこの虎達に食われてしまうのは確実であった。
「どうしようか・・・・・・」
 といってももうどうしようもない。覚悟を決めようとした。だがそれには少し早かった。
 虎達の数が少し少なかった。その為樵に届かなかったのだ。
「おい、これで終わりか!?」
「あと一匹でいけそうだぞ」
 だがいなかった。そのもう一匹がいないのだ。
「むむむ」
 虎達は考え込んだ。そして遂に頂上の一匹が飛び降りた。
「どうするつもりだ!?」
 虎達は彼に問うた。
「朱都事を連れて来る」
 その虎は答えた。
「おお」
「彼なら問題はない」
 他の虎達もそれで納得した。そしてその虎は走り去った。暫くして細い身体つきの虎が連れて来られた。
「おお都事」
 虎達はその虎を見て呼んだ。近目で見るとかなり年老いた虎のようだ。
「わしに捕らえて欲しいのはあの男か」
 朱都事と呼ばれた虎は樵を見上げて虎達に問うた。
「おう、そうじゃ」
「出来るか?」
「無論」
 朱は余裕を以ってそう答えた。
「まあ見ているがいい」
 彼はそぷ答えると連れて来た虎につくようにして登った。そして忽ち樵の側にまで来た。
「き、来た・・・・・・」
 彼は虎が迫って来るのを見て震えた。流石に観念しようとした。だがそれにはやはり早かった。
 ふとここで腰にあるものに気付いた。そこには斧があった。
「そうだ、これで」
 彼はその斧を手にした。そしてそれで襲い掛かろうとする虎の前足を払った。
「ギャッ!」
 それを受けて虎は叫んだ。そして慌てふためいて逃げて行ってしまった。
「都事、大丈夫か!?」
「おい、何処に行かれた!」
 虎達はそれを見て口々に叫んだ。そして皆何処かへ姿を消してしまった。
「行ったか・・・・・・」
 樵は虎達が去ったのを見てとりあえずは胸を撫で下ろした。しかしやはり身の危険は感じていたのでそのまま木の上で夜を明かした。朝になって木を降りて村に帰った。そしてその夜のことを話した。
「朱都事か」
 村人達はそれを聞いて彼に問うた。
「そうだ。知っているのか?」
「知っているも何もここから少し東に行ったところにある町のお役人だぞ。どういうわけか都事と呼ばれているけれどな」
「そうなのか」
「ああ。だがその人はちゃんとした人間だぞ。虎なんかじゃない」
 村人達はそう答えた。樵はそれを聞いて首を傾げた。
「だがその虎は人間の言葉を喋ったのだ」
「それはさっき聞いた
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