暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた
第十五話
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観を続けている。それが何を意味するのか・・・)

 葵の考えはこうだ。

(グレアム提督たちは、管理局に彼らがやっていることを知られる訳にはいかないと考え、身動きが取れていない。しかし、万が一の時は地球人類全てを見捨ててでも、はやてだけは回収するつもりだろう)

 それが、グレアム提督の持つ『余裕』の正体だと葵は考える。

 考えても見て欲しい。彼の持つ権限を使えば、アースラ組だけではなくもっと大勢の戦力を連れてくることが出来る。万年人手不足だとはいえ、一級のロストロギアが関わっているのである。いや、そうじゃなくとも、ジュエルシードを確認した時点で管理局に連絡を入れるくらいは出来たはずだ。

 何せ、原作ではフェイトとなのはの戦闘で暴走したジュエルシードが起こした次元震を観測したからこそ、アースラがやってきたのである。つまり、ユーノの入れた連絡は届いていない。アースラが来たのはあくまで偶然であり、あのままならなのは一人で回収を続けていたはずだ。それで果たして、地球を救えただろうか?

 そして、地球が消滅すれば、当然一般人である八神はやては死亡し、闇の書は転生する。

 それを防ぐには管理局を介入させるのが一番だが、捜査途中で闇の書に気がつかれないとも限らない。そして、気がつかれてしまえば計画は頓挫する以上、彼らは管理局を介入させるわけにはいかないのだ。

(・・・いや、まさかユーノが管理局へ通報したのを揉み消したのもグレアムか?)

 今まではジュエルシード集めを邪魔されるのを嫌がったプレシア・テスタロッサが妨害していたのだと思っていたが、犯人はグレアム提督だったのかも知れない。

 ―――どちらにしろグレアム提督は、これから闇の書により発生する被害と地球を天秤にかけ、前者を選んだということである。それがこれ以上犠牲を出させないという正義感なのか、それとも過去の復讐なのかは分からないが、彼は自分の生まれ故郷すらも見捨てる覚悟でこの計画を進めているのだろう。

(だが、だからこそ俺の知識が生きる・・・!)

 未来の知識を知っている。これがどれだけのアドバンテージを生み出すか。うまくすれば、はやてやヴォルケンリッターに犯罪を犯させずとも事件を終わらせることが可能かも知れない。だからこそ、彼はグレアム一派を探していたのだ。

(だっていうのに・・・)

 もう一度彼は、父親が読む新聞を睨んだ。タイミングが悪い。もう少し空気読めと怨念を込めて睨みつける。

「ああ、世界はいつだってこんなはずじゃ無かったことばっかりだよ・・・!」

 清々しい朝の空気に、大きな溜息が溶けていった・・・
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