幕間 〜雛に秋恋、詠は月へと〜
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――白蓮さんとの関係が一番の理想形。だって……どっちも同じような想い方をする人だった……だから……
まるで今を生きる民を愛していた夜天の王のように。まるでコツコツと積み上げ続けて平穏を築いた白馬の王のように。
だからか、と詠と雛里は納得した。似たような想い方をする月と白蓮は、普通の人間のような恋にはまず落ちない。
恋というモノを一足飛びしてしまっている。一歩踏み出すこともせずに身を引いたりするのは臆病というより思いやり。それは恋というよりも、愛情といった方が正しいのかもしれない。
華琳は女の子に恋をするし、自分が欲しいと思えば手に入れる性質である。生きとし生ける人々への愛情は誰よりも深いが、彼女の場合は恋もしていると言えよう。
秋斗のような考え方を愚かと取るか大人と取るかは人によりけり。
想われるモノは家族と同じで、そのように想いを寄せられる事がどれだけ暖かいモノか、人というモノは後になってみなければ気付かないのがほとんど。幽州の民ですら、白蓮を失って初めて気付けたのだから。
しかれども、淡くて甘い果実を食むような恋をしたいのが乙女というイキモノで、いつまでもそれに浸っていたいのも大多数の女の性。
彼の価値観は、恋する少女達には少しばかり早過ぎた。
もやもやと翳りが浮かぶ。いいことだとは思う、暖かくて居心地がいいとは思う、それでもやはり……。
「ま、ただの一意見だ。女の子は好きなように恋したらいい。全力全開でやればいいさ」
此処で彼女達の気持ちを考えない彼でもなく、いつものように他者に結論を委ねるだけに留めた。
同意など求めないのが秋斗で、同意するモノとだけ過ごしたいなどと甘い事を考えないのが彼。
他人との距離感は近く遠く、例え家族であろうと深入りしない。皆が考えてそれぞれの気持ちを大切にしてほしい……記憶を失っていても根っこの所は変わらない男であった。
雛里がきゅっと抱きついた。
こんな考え方をする男だから、彼は自分の命を投げ捨てずにいられない。それが哀しいのに、やはり彼女はその在り方を愛おしく思う。
人はそんなに弱くない。徐晃隊にしても、兵士達にしても、華琳にしても曹操軍の者達にしても、そして……自分達にしても、想いを宿すから人は強いのだ。
誰かに寄り掛かることが弱さの全てではない。誰かと手を繋ぐことが強さの全てでも無い。そも、弱さと蔑まれる利己主義でさえ、自己への愛で強さを上げるではないか、と。
嗚呼、と雛里は思う。
――人は強い。弱いときがあるだけで、人は一人で、誰かの為に強くなれる。だってその証明が……此処に居る。
彼は弱い人だと、彼女は思っていた。その“慢心”が彼を壊すに至ったはずなのに。彼はいつでもその在り方を曲げずにいたはずなの
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