幕間 〜雛に秋恋、詠は月へと〜
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が籠る。
「恋愛ってのでさ、互いが互いの所有物になるって考え方はあるって知ってる。片方だけの所有物って在り方も政治の渦中に居たらよくあることだろう。きっと前者は甘くて蕩けるような関係で、後者は何処か難しくなりやすい関係だろうけど……俺は自然と惹かれあった後に、偶に寄り掛かり合いながら自分勝手に返し合ったり分かり合ったりする関係の方が好きだよ」
否定はしない。肯定もしない。いつもの如くその上に自分の意見を乗せるだけ。
人それぞれ、千差万別の恋があって当然。生娘のようにソレに対する理想を語る彼ではあるが、自分の意見は曲げたくない。
ただ、そんなことを話されただけで、恋も友情も、どちらも秋斗にとっては変わらない……雛里も詠もそう読み取れた。こうして、話をずらされる。
意見を言われるということは、彼女達も意見を言えるということ。それが否定にしろ、肯定にしろ、である。哀しきかな軍師の性。
「それは……恋と呼べるのでしょうか?」
「さあ、どうだろ。
友情のなれの果てかもしれないし、家族に向けるモノに似た感情なのかもしれない。でも家族ってほら、お互いが所有物な関係なんかじゃなくないか? 恋が実ればそのうち家族になる。その時は互いが所有物なんかでいちゃいけない、と俺は思う……いや、所有物としてなんか絶対に欲しくない、が個人的な気持ちとしては正しいかな?」
相も変わらず不可思議な思考をする、と二人共が思った。
――分からねぇよなぁ。
首を傾げた二人に、彼は苦笑を零した。其の答えは、男なら誰でも持ってる感情で、誰でも持ってる願い。ただ単なる所有物とは違い、独占欲のような言い表しやすいモノでも無い。
「徐晃隊と同じ想いが似たような答えさ。何を於いても守り抜きたい。命を捨てても、他の何を対価として支払っても、だ。
要はモノみたいに扱いたくないんだよ。黙ってついて来いとか俺のもんだ、とかよく聞くけど、好きな相手にそういっちまう男ってのは女を自分勝手に守りたいもんなんじゃねぇかな。等価交換で成り立つ関係でもなくて、相手が一をくれても十や百を返したい。自分勝手でわがままで、それでも相手を想ってるような……そんなのがいいなぁって思う」
つまりは、何処まで行っても秋斗は自分勝手に想うということ。尽くすタイプで合わせるカタチ。愛しいモノに対して自分を捧げるというよりかは寄り添い与えたい、そんな人間。
自分の欲よりも相手が優先でありながら、それが自分の為でもあるというおかしな思考回路。友達であれ、恋人であれ、彼にとってそれは変わらないらしい。人々はそれをなんというのか。
――それって……あんたは好きになった人間を家族みたいに想うってことじゃない。だからボクはあんたのこと……月に似てるって感じてたんだ。
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