幕間 〜雛に秋恋、詠は月へと〜
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してみるべきだと誰でも思う。戻りたいと願うなら逃げ場など無い。
降参というように、秋斗は両手を挙げて首を振った。寝台に上がり込んで、月と雛里の真ん中に収まった。
「腕、広げなさいよ。そのままじゃ身体痛くなっちゃうでしょ? 枕の間に入れてくれたら首のとこになってどっちもが楽って……あいつも言ってた」
彼がいつも気に掛けていた事を話して、漸く詠も寝台に上がる。
四日に一度だけ、彼が悪夢にうなされないように、壊れてしまわぬようにと過ごした優しい時間を再び。
彼としては跳ねる心臓を抑えようと必死なのだが、雛里は慣れたモノで秋斗にぎゅうと抱き着いた。
寝ているはずの月も、いつも詠に抱きしめられているからか彼に抱き着いた。
カチコチと緊張から固まってしまった彼の様子が宵闇の中でも伝わってくる。
詠はそれが可笑しくて小さく噴き出した。
「ふふ……意識しちゃってるんだ」
偶には苛めていいだろう……そう詠は思う。ほんの小さな悪戯心が華開く。女として、なんてことは考える暇も無かった詠だが、そういう風に苛めて見たくなった。
当たり前のことだが彼は男で詠達は女。恋仲であればどういった事をするようになるのかは、劉備軍時代に女同士で知識を深めたりもしている。
だがしかし、彼女の声には少し妖艶さが足りない。そうした誘いの駆け引きをするには、圧倒的に経験が足りないのだ。
さらに言えば、一応、彼も現代人として暮らしてきた過去がある。普通の人として暮らしてきた以上は恋もしているし、ありふれた恋愛経験もあり、女の子にお持て成しされる店に人付き合いで行ったりと駆け引きの遣り方も学んでいる。そも、通常の男子学生を過ごしたモノなら、女の子にモテたい時期を経験したモノが大半、彼も例外なく。
だからだろう、彼女の言い方に些細な違和感を覚え、詠が仕掛ける悪戯は子供の児戯に等しく思えた。
「そりゃこんな可愛い女の子に囲まれて寝るなんて有り得ない経験だし、男としちゃあ緊張の一つもするさ」
「じゃあ、もしもよ? ボク達が華琳みたいな……ほら、あんな感じだったらどうする?」
はっきり言えばいいけどやはり恥ずかしいから言えない。自分のことをそんな軽い女に見られたくないとも思うからではあるが、やはり慣れていないからボロが出る。
いや、酒のせいもあるかもしれない。きっとそうなのだ。普段の詠ならこれほど踏み込まないはず。自分がどれだけのことを言い出しているのか気付かないのだから、やはり酒の力は恐ろしい。
彼がどう返すか、探りを入れてもどう返されるかなど決まっている。
「あー……そん時は全力で逃げるかな。俺は迫られただけでそういう関係にはなりたくないし、誰かのもんにもなるつもりも無い」
一寸、雛里が抱きつく腕に力
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