幕間 〜雛に秋恋、詠は月へと〜
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ほど良く酔いの熱が身体を包めば頭もふわふわと柔らかに。
一番に酔ったのは月だった。元々がそんなに強くない彼女ではあったが、今回は久しぶりの宴会ということもあって早々に眠ってしまった。
片づけは自分たちでしておくと言ってくれた彼らの言葉に甘えて、秋斗は三人とともに自室に帰ってきた。
何処か緊張した面持ちの詠と雛里。彼の腕の中では月がすやすやと慎ましい寝息を立てて服をぎゅっと握りしめている。
詠も雛里も少しばかり飲みすぎた。頭が鈍くなって、眠気も多々あった。目の前の寝台に倒れこみたいくらいに。それでもやはり、久しぶりということもあって緊張しているらしい。
今から秋斗とたくさん話をしようと思っていたのだ。徐晃隊との楽しい時間は好きだが、秋斗個人との時間は彼女達にとってやはり別物。惚れたモノ負けの恋わずらいは、彼女達の鼓動を鈍った頭であっても早めさせるに足りる。
「おやすみ、ゆえゆえ」
彼女達の内心を知る由もない秋斗は、ふわり、と優しく月を寝台に寝かせて、そっと服を握りしめている手を解いた。艶やかな銀糸を撫で梳けば彼女の表情が僅かに綻んだ気がした。
まるで兄にようだな、と二人は思う。仲睦まじい恋仲の男女というよりかは、今はそちらの方がしっくり来る。
例えばそこに自分を置き換えて考えてみても、やはり今の彼では……否、黒麒麟であっても、きっと兄妹のように見られるのではなかろうか、と。
きゅ……と月が彼の服を再び掴んだ。それもまた、妹の所作に見えて仕方ない。
ゆっくりと彼女をあやすように頭を撫でながら、秋斗は二人に声をかけた。
「さて……どうやって寝てたのか分からんのだが」
いつもなら話しながら寝入っていたし、場所は決まっている。秋斗が端で雛里を抱きしめて、詠が雛里の隣で月が一番奥。
なんとなくだが、詠は月を秋斗の横にしてあげたくなった。ほんの少しだけ頬を淡く染めて、チクリと痛む胸に気付かない振りをしつつ詠が口を開く。
「あんたが真ん中に行きなさい。月と雛里に挟まれるカタチでいいわ」
「……できれば端がいい」
「却下よ。寝相が悪くないのは知ってる。それにこの城だと昔みたいに暗殺の類を気にすることもないんだから」
緊急の事態となった時に彼が守れるように、そんな位置づけでもあった。
苦い顔をした秋斗は悩む。さすがに少女二人に挟まれるのはよろしくない。月を動かそうとした彼であったがしかし……雛里がそれを許さなかった。
わたわたと寝台に上がって、彼女はころりと人ひとり分の隙間を開けて寝転がる。そうして、彼の目をじっと見つめた。
たじろぎながら、秋斗はため息を一つ。
「断るって選択肢は……無いんだよな?」
「これで記憶が戻るかもしれない、でしょ?」
出来ることは全て試
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