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化かす相手は
5部分:第五章
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いものじゃな」
「はて。その言葉の意味は」
「うむ。それはどうでもいいことじゃ」
 これ以上は言おうとしないのだった。
「とにかく明日また持って来い。よいな」
「わかりました。それでは」
「さて、明日じゃな」 
 男はまた明日のことを言葉に出してみせた。
「楽しみにしておこうぞ」
 こう言ってその日は終わった。話が終わると彼はすぐに眠りに入った。眠りに入るとそれはすぐに次の日になった。そしてその夜。二条城の前に姿を消した妖怪達が集まっていた。
「さて、また入るか」
「うむ」
 ぬらりひょんがももんじいの言葉に頷いていた。
「ゆうるりとな。楽しませてもらおう」
「それでじゃ」
 彼等は話す。
「きんきん声がおるのじゃな」
「いよいよじゃな」
 彼等の中で面白い緊張が走る。
「きんきん声がどの様な者かは知らぬが」
「偉そうな者を驚かすのが何よりも楽しみじゃ」
 これこそが妖怪だった。彼等は口々に話す。
「ほれ、昔おったじゃろう。あの平とかいう」
「おお、あの入道か」
 昔の話を楽しそうにしだした。
「ちょっと庭に出て来たところを驚かしてやったのう」
「左様左様、しかしびくともせんかったが周りの者が逃げさって面白いことじゃった」
「あれはあれで面白かった」
 その時のことを思い出してけらけらと笑っている。姿は見えないが声だけ聞こえているので城の前の兵達はかなり焦っている。
「また怪異か」
「都の百鬼夜行か」
「ふむ、小者が驚いておるな」
「これはこれで愉快じゃが」
 まずはこのことに喜んでいた。
「しかしな。それでも」
「本命はやはりきんきん声」
 やはり狙いはそれであった。
「行くぞ」
「うむ」
 こうして彼等は姿を消したまま城の中に入った。道はもう昨日行っていたので充分わかっている。それですぐに昨日の部屋に入るのだった。見れば上のところに簾があってそこの向こうが見えないようになっている。だがそこから声がしてきたのであった。

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