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化かす相手は
1部分:第一章
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っているそうじゃ」
 このことを皆に話すのであった。
「それならばそこに言って驚かせばいいとは思わんか?」
「そうじゃのう、確かに」
 彼の言葉に最初に頷いたのは輪入道だった。
「人がいるところにおらなければどうしようもないからのう」
「このまま酒を飲んで食ってばかり」
 傘が面白くなさそうに述べた。
「思えば詰まらんことじゃて」
「よし、ならば決まりじゃ」
 ぬらりひょんはここで話を纏めた。
「皆で都に出るぞ、よいな」
「都にか」
「そこで人共を驚かせるのじゃ」
 楽しげに笑い酒を一杯啜りながら述べる。
「化かしたりしてな。それでどうじゃ」
「普段は物陰に隠れたり人に化けたりしてじゃな」
「その通りじゃ。悪い話ではあるまい」
「うむ、それではな」
「それで行こうぞ。思い立ったが吉日じゃ」
 彼等は口々に言い合いとりあえず周りにある酒や食い物をせかせかと胃に詰め込んだ。まずはそうしたものを全てどうにかしてからだった。
「行こうぞ行こうぞ」
「都にな」
 こうして彼等はとりあえず人間に化けて都に出た。都はもう彼等の知っている都ではなかった。実に人が多く豪華絢爛な有様だった。
「いや、これはどうしたことじゃ」
「つい最近まで草ぼうぼうで荒れ果てておったのに」
 砂かけ婆と塗り壁が周りを見回して驚いている。塗り壁はやけに大柄で横にも広い男になっている。だが余り人間には見えないところもあった。
「それがこんなに変わるとは」
「ほんの五十年で」
「五十年。短い間じゃな」
「全くじゃ」
 ぬらりひょんは右手で扇を使いながらももんじいの言葉に頷いた。
「ほんの五十年でここまで変えるとは」
「人間もまた凄いものじゃな」
「んっ、何じゃあれは」
 ここで一旦木綿がふと何かに気付いた。彼は顔が四角く今にも吹き飛びそうなひょろっとした白い男に化けていた。やはりあまり人間には見えない。
「あそこでやっておるのは。芝居か」
「芝居!?」
「ほれ、あれじゃ」
 何か騒がしい小屋を指差す。赤や青、黄色の看板がありその下に人が集まっている。一旦木綿はそこを指差していたのである。
「あの小屋じゃ」
「あの小屋がどうしたのじゃ?」
 砂かけ婆は殆どそのままだった。
「面白いことをやっているみたいじゃぞ」
「ふむ、面白いことか」
「芝居か」
 彼等はそれを見てそれぞれ小屋を見る。見れば見る程興味が沸いてくるのを感じていた。
「入るか?」
 鬼が言った。
「面白そうじゃぞ」
「そうじゃな。じゃあ入ってみるか」
「うむ。そうしよう」
 これで決まりだった。こうして彼等は小屋に向かった。だが入ろうとするところで不意に並んでいる人に止められてしまった。
「何じゃ、どうしたのじゃ」
「わし等が何かし
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