もう一つの運命編
第3話 助け出すためには
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、あながち的外れじゃあないんですよね」
手段はともかく、ロシュオが求めるのは彼の妻一人きり。王妃が帰りさえすれば、碧沙の体でなくともよいのだ。
「問題は、光実みたいに犠牲者を出さないためにはどうするか、だな」
「正攻法の死者蘇生ですか……」
死は摂理。王妃は言った。その通りだ。愛する人を蘇らせるために外法を求めれば、求めた者は外道に成り下がる。そのくらい、巴くらいの歳の少女にも容易く予想できた。
「はっきり言ってできっこありません。この選択肢は切ったほうがいいと思います」
「じゃあ、どうする?」
思考を次の段階へ移しながら、体からは力が抜けていく。全神経を頭に集中させているのだから当然だ。
結果として初瀬の胸板にもっと深くもたれる形となる。
「逆に考えるのはどうかしら……甦らせるのではなく、完全に葬る。オーバーロードの王が、蘇りを望めなくなるくらいに、完膚なきまでに、王妃を――殺してしまえば」
ロシュオの怒りは天をも衝くほどになろう。巴は生きて帰れないかもしれない。それでもこれは妙案だ。
問題はそれをどういう方法で実行に移すか。
「王妃はヘキサの体を器にしてんだろ? 下手すっとヘキサまで殺しかねないぞ、それ」
「そこなんですよね。今の王妃は碧沙に取り憑いている。それを可能にしているのが、黄金の果実。ヘルヘイムの森に生る、勝者への褒美。ヘルヘイムの……」
――“わたしね、インベスの胎から産まれたんですって”――
――“果実を食べてもインベスにならないし、傷つけられても苗床にもならない”――
「ヘルヘイム抗体――」
巴は転がり出た考えをそのまま零した。
「そうよ。あの子は免疫血清の元になるだけの強い抗体保持者。黄金の果実だってカテゴライズするならヘルヘイムの産物。碧沙の抗体がもっともっと強くなれば、黄金の果実を体の外に弾き出せるかもしれない!」
「いで!?」
「ああ! ご、ごめんなさいっ」
勢いをつけて身を起こしたせいで、初瀬の顎にアッパーを食らわせる形になってしまい、巴は慌てた。
「……お前、たまに俺の存在忘れるだろ」
「そんなことありません! ……けど、今のは、その、すみませんでした」
他でもない初瀬にしていい仕打ちではなかった。思い返すと、意図してではないとはいえしでかしたことの重さがひしひしと押し寄せて――
「で?」
「はい?」
「その『ヘキサの抗体を強くする』ためには何が必要なんだ?」
初瀬は巴の頭に大きな掌を載せた。「ん?」と、笑みとまではいわないが、優しい表情をして。
心臓が高鳴って、直視できなくなった。
「そ、その辺は、ずっと碧沙と一緒にいた裕也さんか光実さんが知ってるん
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