7部分:第七章
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それぞれ話すのだった。
「それでなんだよ。だからな」
「これで帰らせてもらう」
こう話すのだった。
「悪いな、またな」
「これで帰らせてもらう」
「また来て下さいね」
マンホール人は明るく笑って話すのだった。
「また雨が何日も降れば何時でも来ることができますからね」
「わかったよ、じゃあな」
「二人でな」
こうして二人でマンホールの中に入っていく。マンホール人に別れを告げて。
二人がマンホールの中に入るとほぼその瞬間だった。元の世界に戻っていた。傘は道の真ん中に置いていて二人は雨の道の中に立ち尽くしていたのだった。
「戻ってきたみたいだな」
「そうだな」
二人で顔を見合わせて言い合う。そしてすぐに傘を拾ってそれをさしながらとりあえずはマンホールの蓋を閉じたのだった。世界はまだ明るく時間は殆ど経っていないようである。
「戻ってきたけれどな」
「面白い世界だったな」
昇は楽しそうに笑って翔に告げた。
「あっちの世界もな」
「そうだな。本当にあるとは思わなかったがな」
「それでも。よかっただろ」
「ああ」
翔は照れ臭いのか表情は変えない。しかし声は微かに笑っていた。
「また行くか」
「そうだな、またな」
昇は彼の言葉に応えながら上を見上げる。雨はまだ強く降り続けていた。まるで止まることなぞ最初から全く考えていないように。
「行こうぜ、二人でな」
「雨は有り難いものだ」
翔は今度はこんなことを言った。
「時としてな」
「ただ水をくれるだけじゃないんだな」
二人は微笑んで話し合いマンホールを見下ろしていた。そこを開ければ彼等がいることを心で確かめながら。そうしてそのマンホールの向こうにある。楽しい世界のことを思い浮かべてもいた。またその世界に行くことも。
マンホールの中 完
2009・6・2
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