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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、宣言する
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うになっていたかもしれない。
彼らはあの日、迷宮区に足を踏み入れることもなく、PKの標的にされることもなかったかもしれない。
サチは、死なずに済んだかもしれない───

そんな『たられば』を語ればきりがないということくらい、僕だってわかっている。わかっているのに、縋りつきたくなってしまう。
あの事件を切っ掛けに、僕たちの関係は変わった。変わって───しまった。
キリトは《黒の剣士》としてオレンジプレイヤーへの復讐を開始し、僕はそれを止めるために、こうして攻略組の臨時集会に呼び出されている。

どうして、こんなことになってしまったんだろう。
どうして、こうなる前に何とかすることができなかったんだろう───


「……彼がシステム上でオレンジプレイヤーとして認識されてしまった場合、我々は実力行使に出ることも止む無しと考えています。もちろん、そうなる前に止められるよう、最大限の努力はするつもりですが……」
「しかし、《黒の剣士》の狙いが自分達だということは、残りの犯罪者達とてもう気付いているのだろう? 奴らがカーソルをグリーンに戻し、何処かの街に逃げ延びているのだとすれば、《黒の剣士》に狙われるのも時間の問題だろう。オレンジだと知らずにパーティを組んでしまう者が出てくる可能性がある以上、あまり悠長なことは言っていられないのではないか?」
「そうですね……。事実、何も知らずにパーティを組んでいた方々の目には、《黒の剣士》は無差別PKとして映っていたことでしょうし……。だからこそ、我々としても対処に困るところなのですが……」
「下手に奴を擁護するわけにもいかんしな。過去に自分達を襲ったオレンジだけを狙うPKKなのだと説明したところで、何人が納得してくれるのやら」
その後も話し合いは続いたけれど、集まったプレイヤーたちの中から建設的な意見が出ることはなかった。
それも当たり前だろう。身の振り方を決めるための会議だと口で言ってはいも、そんなものは所詮、形だけの話なのだから。

ディアベル率いる《ユニオン》は立場上、街の住人からの不安の声を無視することはできない。
26層ボス攻略会議の際に結成・御披露目され、瞬く間に最強ギルドの一角として名を馳せるまでに至った精鋭集団───《血盟騎士団》は、円滑な攻略を妨げる要素となる《黒の剣士》に対しては否定的だ。
つまり彼らの腹の内は、最初からキリトを“排除”する方向に固まっている。
この会議は出来レースと同じだ。“話し合った結果そう決まった”という大義名分を得るために、こうして各ギルドの幹部プレイヤーたちが顔を突き合わせているに過ぎない。

そんな魂胆の見え透いた会議にも、その会議に参加している自分にも───嫌気が差す。
こんな時にどうすればいいのか、僕にはわからなかった。
僕は──
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