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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、宣言する
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ンバーも、他でもない、自分たちが守ろうとしてきたプレイヤーの手によって殺されたのだから。

だけど、僕は知らなかった。
……否、知ってはいた。知ってはいたけれど、サチが人の手で殺されたということに気を取られて───失念していた。
サチの死に違和感を抱いたあの時、僕はルシェに黒猫団メンバーの名前を尋ねた。サチ、ササマル、テツオ、ダッカー、ケイタ。彼ら一人一人の死因を確かめ、違和感の正体を明らかにしようとした。
そうして最終的に、彼ら《月夜の黒猫団》のパーティは、第27層のモンスターからではありえないはずの貫通属性攻撃を行う何者か───槍や細剣を得物とするオレンジプレイヤーによって殺害されたのだという結論に至った。

あの時、僕は無意識に『全滅』という言葉を使った。彼ら《月夜の黒猫団》は、第27層の迷宮区でオレンジに襲われて『全滅』したのだと。
けれど、そんな僕の表現は正確ではなかった。何故なら《月夜の黒猫団》には、事件の二ヶ月前に加入したばかりの新規メンバー───6人目の剣士が存在していたのだから。

あの時は途中で答えに辿り着いてしまい、その剣士のことにまで頭が回らなかったし、そもそも彼女も名前までは聞かされていなかったようだ。
相当な腕前だという話を聞いてはいたものの、同じパーティの5人が全員死亡していることから、その剣士だけが生き残っている可能性は極めて低いだろう───彼の存在を失念していたことに後から気が付いた時、僕はそう思った。

そう思っていたから───気付けなかった。

僕が死んだと思っていたその剣士は一人だけ生き延びていて、事件から今日に至るまでの間、ただ一人、復讐の機会を窺い続けていたのだということも。
その剣士というのが、長らく僕たちの前から姿を消していた黒ずくめの少年───キリトだったのだということも。
そうして、あれから半年が経った今、その復讐をいよいよ実行に移したのだということも。
僕は、何も知らなかった。気付いてあげることもできなかった。
彼が孤独でいることを知っていたのに。孤独であることの苦悩を、僕は知っていたはずなのに。

自ら一人であることを選んだキリトが、レベルを偽ってまで黒猫団のみんなと一緒にいることを選んだのは、それだけ限界だったということだ。
孤独でいるのが───限界だったということだ。
その孤独に気付いてあげることが、僕にはできなかった。
いつぞやの迷宮区で最後に会った時。きっとあの時が、僕とキリトにとっての分岐点だったんだ。
僕がキリトの孤独に気付いていれば。彼の孤独に気付いて、手を差し伸べることができていれば。
キリトがレベルを偽ってまで、黒猫団に入ることはなかったかもしれない。
前衛不足に悩まされていた黒猫団は、攻略組を目指すことを諦めて、街で平和に暮らすよ
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