つぐない
とあるβテスター、宣言する
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うものだった。
「睨むなよ。僕はあの時の約束通り、誰にも手は出しちゃいない。今議論されるべきは僕についてのことじゃないだろう」
抑揚を抑えた声で僕が言うと、彼らは露骨に顔を顰めた。
彼らからしてみれば、殺人鬼である僕が《黒の剣士》への対策を議論する場にいること自体、気に食わないのだろう。
それもそうだ。いくら誰にも手出ししないと約束しているとはいえ、彼らにとっての僕は《投刃》という犯罪者でしかないのだから。
そして、僕も───少なくとも彼らの前では、人殺しのオレンジを演じ続けると決めている。演じ続けなくてはならない。
それが、あの時自分がやったことへの、僕なりの責任の取り方だ。
「目的を見失うなよ。今は街の住人の不安を解消するために、《黒の剣士》をどうするのか考える時間だろう。そうやって僕に敵意を向けたところで、その分話が進まなくなるだけだ。不毛なことはやめておくんだね」
「あまり調子に乗るなよ、人殺しが……」
………。
「……オリヴィエさん、続きを」
「は、はいっ」
どこからかぼそりと呟く声が聞こえた───いや、むしろ聞こえるように言っているのだろう───のを最後に、それ以上彼らが突っかかってくることはなかった。
そんな悪態を無視して、気まずそうに視線を泳がせていたオリヴィエに続きを促す。
あくまで中立を保とうとしてくれているオリヴィエには申し訳ないけれど、今更彼らと和解することはできそうにもないし、向こうも望んではいないだろう。
自分で選んだこととはいえ、彼らとの溝の深さに今更ながら辟易としてしまう。けれど、今はお互いの感情をぶつけ合うことよりも、本題の議論を続けるほうが先決だ。
そうだ、今は言い争っている場合じゃない。
《黒の剣士》を───キリトをどうにか止める方法を、考えなくてはならないのだから。
あの日から───サチがいなくなってしまったあの日から、半年もの月日が流れた。
その間の僕のコンディションは御世辞にもいいものとは言えず、精神的に落ち着かないことが多く、攻略にも身が入らない日々が暫く続いた。
些細なミスでパーティを窮地に追い込んでしまったり、ふとした瞬間にサチのことを思い出し、一晩中眠れないという日も少なくはなかった。
ルシェも、そんな僕と同様に───否、僕以上に参っていた。当たり前だ。彼女はサチの親友で、他の誰よりもサチのことを想っていたのだから。
あれから半年が経った今、ルシェは表面上はすっかり立ち直ったように振る舞っている。だけど、あの黒鉄宮の蘇生の間で───サチの名前が刻まれた碑の前で泣き叫んでいた彼女の顔を、僕は一度も忘れたことがなかったし、きっとこれからも忘れられないだろう。
忘れられるわけがない。あの悲しみも、あの悔しさも、忘れられるものか。
サチも黒猫団のメ
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