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幸せは消えて
7部分:第七章
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のことは僕にはわからないけれど」
「そうですか」
「わからないんですか」
「けれどね。あまりいいものじゃないと思うよ」
 しかしこうは言うのだった。
「いいものじゃね。少なくとも今は幸せじゃないし」
「そうですよね。幸せじゃないですよね」
「今は」
「これからもね。幸せじゃないだろうね」
 若者は未来を今ここで言ったのだった。今ここで、でだった。
「こんなことじゃ」
「ええ。幸せを望んで国を築いたのに」
「あんなことじゃ」
「けれど。もう僕には関係のないことだよ」
 背を向けた言葉だった。
「去るんだからね」
「ええ。それじゃあ」
「行きますか」
「うん」
 彼等は最後に振り向いた。城壁は相変わらず高く多くの兵士や魔法使い達が警護にあたっている。そしてその長い城壁の端でまた戦いの声が聞こえてきていた。
「殺せ!」
「許すな!」
 アルト族の声だった。その声が聞こえてくる。
 彼等の後ろには昨日捕まっていたあのバードがいた。服も身体もぼろぼろになった彼はよろめきながら忌々しげに呟いていた。
「こんな国に・・・・・・二度と来るものか」
 だがアルト族の罵倒と戦いの音は相変わらず聞こえていた。それが止まることはなかった。若者達が城壁が見えなくなる場所にまで来てそのうえで何処かに向かってしまっても。果てしない戦いと罵声だけはこの国で続くのであった。何時果てるともなく。


幸せは消えて   完


                 2009・8・18

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