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幸せは消えて
5部分:第五章
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それを見ているだけだった。
「どうやら敵が来たみたいですね」
「その周りの国々から」
「そうみたいだね」
 若者は今回も烏達の言葉に頷いた。その物々しい雰囲気からそのことを悟ったのである。
「攻めてきたみたいだね」
「それにしても皆すぐに城壁に向かいましたね」
「まるで慣れているみたいに」
「慣れているんだろうね」
 若者は空虚な色の言葉になっていると自分でわかっていたがそれでも言った。
「やっぱり」
「それだけいつも戦争をしているってことですか」
「周りの国と仲が悪いんですか」
「こんなことを続けていたら仲が悪くなるのも当然だよ」
 そう言ってまた奴隷達を見るのだった。相変わらず休むことなく働かさせられ続け鞭で打たれ蹴られ怒鳴られている。ここまで酷い虐待は彼も見たことがなかった。
「恨みも買うだろうし」
「そうですか。まあそうですよね」
「相手も人間ですから」
「自分達だけが人間じゃないんだよ」
 若者は今度はこんなことを言った。
「それがわからないとね。やっぱりね」
「ええ。そう思います」
「本当に」
 使い魔達も彼の言葉に頷く。そうしてそのうえで虐待される奴隷達を見ていた。彼等はやせ細り今にも倒れそうだがそれでも働かされ続けていた。

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