2ndA‘s編
第十六話〜生誕〜
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は罅が入り、部分的に脱落している箇所もある。そして肉体の方は所々から血が滲み、指が数本折れ曲がり、海水から出たばかりだというのにその特徴的な灰銀の髪が濃い朱色に染まり始めていた。
幸いであったのは、ライの意識がハッキリとしたものではないが残っており、バリアジャケットが解除されていなかったことであろうか。
「げ……えほっ、……っ、はぁはぁ」
器官に詰まっていたであろう血混じりの海水を吐き出すと、ライは肺に酸素を満たそうと荒い呼吸を開始した。
「癒し手!彼を――――」
焦った様子を隠すようなこともせず、管制人格は叫ぶ。そしてすぐ近くまで来ていたシャマルは即座にデバイスであるクラールヴィントを機動させ、治療を開始する。
浮遊魔法により、寝台で寝そべるような体勢になったライは霞む視界の中で何とか状況を確認しようとしていた。
「……っ、ぃあ……」
意味をなさない声が漏れる。
身体を包むようにじんわりと温もりが身体に満ちていく。それと共に神経を炙るような痛みが徐々に薄れていく。それが治療によるものなのか、いよいよ身体の怪我がまずい状態になっているからなのかは、朦朧としている今のライの意識では判断がつかなかった。
「…………ぁ」
混濁気味の意識の中、ライの霞む視界で確かにそれが映り込んだ。
意図していたのか、それとも反射的だったのかは本人も判断がつかなかったが、ライは自身を覗き込む彼女に右腕を伸ばす。
「っあ!……くぅ……」
治療中でボロボロの腕は動かすだけで脳に激痛を訴えてくる。しかし、今はそれが有難かった。痛みにより朦朧とする意識がはっきりし、そして自分が手を伸ばす先にいる女性への焦点がハッキリと合わされていくのだから。
「……――――った」
自分を覗き込むようにして見守っている彼女の頬にやっとの思いで右手が到達する。壊れ物を扱うように、その場に存在するのを確かめるようにライは彼女の頬を一回、二回と撫ぜる。
そして確かにそこに彼女がいることを実感すると、ライの口から安堵の息と言葉がもれた。
「…………よかった」
「っ…………ありがとうっ、ありがとう!」
彼女の口から出るのは感謝の言葉。瞳から零れるのは溢れ出した感情故の雫であった。
「……ああ……僕は墜ちて…………えっと、どうなった?」
自分が治療されていることぐらいは把握できるのだが、それ以外の状況が今のライには不透明すぎた。
「皆無事だ。そして主は自らの意思で立ち上がることを選び、そして私に名を与えてくれた」
ライが聞きたい情報とは違ったが、それよりも確かめたいことが増える。きっとそれは自分が知るものと同じであると、確信に近い予測はあったがそれでも彼女自身からそれを
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