2ndA‘s編
第十六話〜生誕〜
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海鳴市・海上
普段であれば耳に心地よい音を運んでくる穏やかな波が、今はなりを顰めている。
だが、ほんの数秒前に起こっていた爆発とそれに伴う轟音がなくなっている事を考えれば、いつもより荒れた海であったとしてもそれは静寂な海であると見ていた者は錯覚する。
そして更に言えば、轟音が止むと同時に小さくはない白銀のベルカ式魔法陣である平たい三角形が、先程から雲に覆われていた暗澹たるその空間を照らしている。その光は波が出す音では小揺るぎもしない程の存在感を醸し出しているのだ。その為、今この空間にはどこか神聖なものを感じさせるものとなっていた。
どこかキャンバスを連想させる白銀の光に新たな色が魔法陣となって生まれる。それは赤、桃、緑、蒼の四色。それらが白銀の魔法陣を囲むように展開された。合計で五つの魔法陣が展開されると、中央の白銀の魔法陣の上に丸い卵のような白い球体が生まれる。
それは先刻の人型が生まれた蛇で編まれたものとは程遠い。禍々しさではなく生まれてくる命を祝福する清らかさに満ちた雰囲気を持っていた。
「さぁ、皆起きような?」
鈴のような声が響く。
「おいで、私の<守護騎士/家族>たち」
周りの四枚の魔法陣の上に新たに騎士が現れる。それは主を守るために生まれた命の形。
四人は現れた時、赤子のように目を瞑っていたが、それがゆっくりと開かれる。それと同時に白い卵に亀裂が入った。
「皆、おはような」
その言葉と共に卵が孵る。中から現れたのは夜天の書の主とその管制人格。今この時、闇に浸っていたモノが夜の闇を照らす<希望/カタチ>を取り戻した瞬間であった。
「我が主」
「うん、行ってもええよ」
現れるやいなや、管制人格である彼女は懇願するような視線を主であるはやてに送る。それを察したはやては彼女のしたいようにさせるために頷きと笑顔と言葉を返した。
許しを得た彼女は即座に降下を始め、そのまま海中に飛び込んだ。
はやては彼女を見送ると、管制人格が戻るまでに状況を整理しようと思ったのか、近場の海から生えている足場になりそうな岩場を見繕いそちらの方に移動する。
ふわりと岩場に足を乗せると、久方ぶりの立つという感覚に彼女は戸惑いを覚える。しかし、幼いながらも精一杯の意地を見せ、周りの家族たちに自分は大丈夫であることをアピールするように軽く胸を張る。
視線の先にはどこか泣きそうな、そして申し訳なさそうな表情を浮かべる四人がいた。少しの沈黙が場に降りる。
四人の騎士は何を言えばいいのか分からなかった。彼女たちは主であるはやての約束を破り、他人を傷つけた。そして助けたい、無事でいてほしいと願いながらも、主を危険な場所に居らざるを得なくしてしまったのだから。
少しだけ続く静
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